2023年11月30日からドバイで開催される「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」に先駆けて、国連主導で行われた航空機からの排出量削減に関する会合で、100カ国以上の国が2030年までに5%の二酸化炭素を削減することで暫定合意した。以前の草案では5~8%という目標が掲げられていた。
航空業界は世界の二酸化炭素排出量の2~3%を占めていると推定されている。その排出量削減に向けて鍵となるのが持続可能な航空燃料(SAF)。現状、そのコストは高く、流通量はジェット燃料全体の1%未満と言われている。
米国は、今回の合意は、クリーンエネルギープロジェクトへの投資が求められている金融界に対して「明確で前向きなシグナル」になるとの声明を出している。また、コロンビアのICAO代表マウリシオ・ラミレス・コッペル氏は、投資家に5%という明確な目標を提示することで、「SAFプロジェクトの始動と加速につながる」と述べた。
航空は、気候変動対策に関するパリ協定の直接の対象にはなっていないが、航空業界は2050年までに実質排出量をゼロにするという野心的な目標を設定することで、世界の目標と歩調を合わせることを約束している。
しかし、一部の国が今回の合意を留保した。
2060年までにカーボンニュートラルを目指すことで合意している中国は、「5%の目標は航空会社の運航コストを大幅に増加させ、エネルギーと食糧安全保障に脅威をもたらし、発展途上国を差別することになる」と表明した。
また、中東の2大産油国でOPEC加盟国であるサウジアラビアとイラクは、目標と期限の両方に反対した。
ブリュッセルに本拠を置く交通・環境団体の航空ディレクター、ジョー・ダルデンヌ氏は、「国際民間航空機関(ICAO)には、この目標を強制する権限がないため、おそらく煙に巻かれて終わるだろう」と話し、「世界全体でこの5%目標を達成するために、どのような種類の燃料をどれだけ生産する必要があるかは依然として不明だ」と続けた。
航空業界は、航空分野で実質ゼロ排出目標を達成するには、SAFの開発に1兆4500億ドル(約218兆円)から3兆2000億ドル(約480兆円)かかると見積もっている。
開発途上国が資金をより容易に利用できるようにするためには、米国や欧州などでのSAFの生産を強化する必要がある。
※ドル円換算は1ドル150円でトラベルボイス編集部が算出
※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。