マレーシア・ジョホールバルで2025年1月15日から20日まで「ASEANツーリズムフォーラム(ATF)2025」が開催された。今年のテーマは「Unity in Motion: Shaping ASEAN’s Tourism Tomorrow(動きの中の団結:ASEAN観光の未来を形作る)」。各国の観光産業のリーダーや政府関係者、グローバル組織などが一堂に会し、回復、成長、持続可能性に向けた戦略を議論した。
ビジョンを語る力強いスピーチ
開幕式の基調講演には、マレーシアのティオン・キング・シン観光・芸術・文化大臣が登壇。ASEAN観光の復興で、各国の協力体制の重要性を強調した。ATF2025については、「このフォーラムは、各国の団結と協力への私たちの共通のコミットメントを再確認する場である。ギャップを埋め、パートナーシップを構築し、明るい未来を描くためのプラットフォームとして機能する」と開催の意義を説明した。
また、2026年に展開されるマレーシア観光促進キャンペーン「Visit Malaysia 2026」の重要性も強調。「マレーシアとASEAN全体を文化の豊かさ、自然の驚異、そして比類なきおもてなしを持つグローバルなトップ観光地として位置づけることが目標」と述べ、近隣諸国や国際的なパートナーに対し、キャンペーンへの支持を呼びかけた。
ASEAN加盟国の観光大臣も同様の意見。このフォーラムが、加盟国間の結束を強化し、共通の課題に取り組む場であることを強調した。
ATF2025で取り上げた戦略的優先事項は、以下だ。
- 持続可能な(サステナブル)観光開発:ASEANの観光産業全体で環境に配慮した実践を推進し、長期的な存続可能性を確保
- デジタル変革:先進技術を活用し、旅行者体験の向上と運営効率化を図る
- 文化遺産の保存:地域の豊かな文化遺産を観光の核として強調
- 回復力と復興:混乱を緩和し、業界の回復力を強化するためのベストプラクティスの共有
ティオン大臣は、特に、1の「持続可能な(サステナブル)観光開発」が重要であるとし、「私たちの自然と文化の資産はASEAN観光の基盤である。それらを保護することは責任であるだけでなく、模範を示す機会でもある」と述べた。
ASEAN諸国の連携へ、観光大臣による共同宣言
同フォーラムには、42カ国から221の出展者、323のバイヤー、100人以上の国際メディアが参加。ASEAN観光大臣による地域連携強化のための共同宣言もおこなわれた。主な取り組みには、ASEANシングルビザの推進や交通網の整備が含まれる。これにより、ASEAN域内旅行をより魅力的でアクセスしやすいものにすることを目指す。
また、各加盟国が独自の伝統、料理、芸術形式を披露する文化展示もおこなわれ、ASEANの豊かな文化的遺産が紹介された。ポストパンデミック時代に適応した革新的なソリューションも紹介され、そのなかには、ASEAN諸国間の交通の連携向上や、シームレスな旅行体験を実現するデジタルソリューションの統合も含まれている。
各国が実施した記者会見での発表内容は、持続可能な観光財源の調達やコミュニティ主導の観光イニシアチブ、未来に対応した労働力育成の役割など多岐にわたった。健康志向の旅行ニーズへの対応も多く、ASEANの伝統的な癒しの習慣とともに、多くのASEAN加盟国がウェルネス観光に力を入れていることを示した。