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現地ツアーや体験アクティビティ、観光アトラクション施設などタビナカ事業者のソーシャルメディア展開における問題点が一つ、明らかになった。「ソーシャルメディアに時間をかけすぎ」といった話ではなく、むしろ、せっかく時間や労力を注いでいるソーシャルメディアが、果たして本当に消費者とつながるチャネルになっているかという疑問だ。
タビナカに特化したメディア「アライバル(Arival)」がこのほど公表した調査データによると、事業者側が重視しているデジタルマーケティング・チャネルの多くは、消費者が旅行や現地での過ごし方について情報収集したり、調べたり、計画を立てる際、もはやあまり活用しておらず、特に若年層の旅行者でこの傾向は顕著だった。
アライバルでは、米国の旅行者1000人を対象にした調査「The 2024 U.S. Experiences Traveler」と、世界各地の事業者7000人の調査「The Global Operator Landscape(3rd Ed.)」の2つを比較した。
その結果をまとめた同社の最新レポート「Getting Direct: The State of Digital Marketing」では、事業者側が力を入れているマーケティング活動と、リーチしようとしている消費者層には、かなりの食い違いがあるとしている。
事業者と旅行者を隔てるマーケティング・ギャップ
同レポートによると、事業者側が最も重要視しているソーシャルメディア・マーケティングの舞台はインスタグラムとフェイスブックだったのに対し、若年層の旅行者からの支持が高かったのは、短い動画アプリのTikTokやYouTubeだった。
オペレーターのマーケティング方法と旅行者のリサーチ方法にはギャップがある(Arivalより引用)
調査時点で若年層旅行者が旅行について調べる際、最も利用していたのは、以前と変わらず検索チャネルのグーグルだったが、これに僅差で続いたのがTikTokだ。これらはショート動画でおなじみのソーシャル・ビデオ・チャネルだが、今やグーグルとトップを競う存在になっており、昨年、米国サンディエゴで開催されたアライバル360でも注目を集めるトピックとなった。
一方、タビナカ事業者を対象としたマーケティング・チャネルの調査結果では、TikTokもYouTubeも、他よりも効果が低く、利用も少ないとの評価に沈んでいた。これはなぜかなのか?
ソーシャル動画の問題点の一つは、マーケティング効果の判断によく使われる指標、例えばクリック数、ウェブサイト訪問数、予約件数などとの関連付けが難しいことだろう。好対照をなすのがグーグルで、非常に分かりやすい広告トラッキング数値をあれこれ提供している。
しかし、効果測定方法が分からないという理由で、活用しないのはどうだろう。ましてや今回の調査結果が示す通り、旅行の情報収集やプランニング段階において、欠かせない存在になっているのであれば、なおさらだ。アライバル360に登壇した旅行インフルエンサーのラビ・ロス氏は、ソーシャルメディア・マーケティング効果測定を見直すための一例として、ユーザーのエンゲージメントをどのようにチェックするべきか、自身の考えを語っている。
タビナカ事業者には、今回のデータをマーケティング戦略見直しのきっかけとして、参照してほしい。特に若年層旅行者をターゲットにしている場合は重要だ。昔からのマーケティング格言にあるように、人を集めようと四苦八苦するより、人が集まっているところへ出向くのが得策だ。
※この記事は、Arival(アライバル)社が運営するニュースメディア から届いた以下の英文記事を、同社との正規提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:POV: Operators’ Digital Marketing Gap
著者:Janelle Visser氏