国連世界観光機関(UNWTO)事務局長のタレブ・リファイ氏がJATA国際観光フォーラムの基調講演に登壇し、国際観光におけるアジアの急成長とその成功要因、それに伴う責任について言及した。アジアが国際観光の中核に成長した最重要のポイントを各国政府の観光に対する理解と適切な政策によるグッドガバナンス(良き統治)にあるとした上で、「成長に伴い持続可能性が減ることがあってはならない。その方程式でもアジアは推進しなくてはならない」と訴えた。
もう一つ、アジアの成功要素として、草の根への浸透も指摘。「国民が本当に輝かなければ国は輝かないし、自分たちが素晴らしいと思わなければ素晴らしくはならない。観光素材や経済力よりも草の根レベルのパフォーマンスが大切で、その業績でイメージを変革させた。行く価値のあるデスティネーションにするためのグッドガバナンスが効いている」と続ける。
リファイ氏によるとアジアは2012年、国際旅行者10億3500万人の23%にあたる2億3000万人を受入れ、2030年には国際旅行者18億人の30%に相当する5億4000万人にまで成長。国際観光は様々な不安定要因があるにも関わらず今後も拡大を続けるが、アジアは他の地域を上回る年4.9%増の高い成長率で推移するとの予想値を示す。
さらに「もはやアジアは各国が求めるソースマーケットでもある」とし、アウトバンドでの重要性も指摘。以上を踏まえ「アジアはパワーと強さを得たからには、それだけの責任が上がっている」とし、成長による収入増加は環境や文化遺産の保護、人間生活の向上に使われるべきと強調。「観光は国や社会、人をより良くしなくてはならない義務を負っている。この部分でアジアがリーダーシップを発揮することで、将来にわたって優位性を発揮できる」とアジアに対する期待を力強く語った。
なお、リファイ氏は日本について、震災後の劇的な回復は強い決意と強いガバナンスがあってこそ実現可能だったとし、「日本はあらゆる国の尊敬を得ている」と言及。また、持続可能性と観光発展を目指す「世界観光倫理憲章」の運用組織「世界観光倫理委員会」の委員に、日本から初めて本保芳明氏(元観光庁長官・首都大学東京教授)が就任したことを紹介し、「日本がこのように貢献してくれることをうれしく思う」と述べた。