サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は、2015年春闘(春季生活闘争)で、2014年に引き続き、全組合で0.5%以上の実質的な賃金改善(ベースアップ)を要求する方針を発表した。重点課題の3本柱として「賃上げ」「時短」「政策・制度実現の取り組み」をあげ、これらを通して格差是正と経済の好循環の実現を目指す。
サービス連合会長の後藤常康氏は「観光立国へ向けて政府や各産業が施策を推進する中、2014年は訪日外客数が1300万人を超え、サービス・ツーリズム産業は21世紀のリーディング産業として実証されつつある。しかし、労働条件は依然として低い」と述べ、「単に物価や税率アップの理由ではなく、内需拡大、および産業の底上げに賃金改善が必要との認識で要求していく」との考えを示した。
事務局長の見世順治氏によると、0.5%以上の改善は日本労働組合総連合会(連合)の要求(2.0%以上の改善)より低いが、中長期目標である「35歳年収 550万円」を実現するためには、「ハードルを下げ、全組合で要求できる状況にすることが重要」とその意図を説明。来年以降も継続し、段階的に積み重ねていく必要性を強調した。
ただし、これまで「賃金カーブを維持」との報告を受けても、平均月収はこの10年で減少傾向にあることから、「前年同様の賃金改善原資の確保」を念頭に、「前年が減少した場合は、その分を戻した上でさらに0.5%以上を要求する」。そのため、今年は初めて賃金改善に係る用語を定義づけし、「維持」「上昇」「下降」の状態を明確にして、確実な改善に繋げたい方針だ。
一時金については年間4か月。すでに確保している組合は前年実績以上を要求する。このほか、契約社員やパートタイマー等の待遇改善も正規労働者同様に積極的に取り組み、月例給では0.5%以上の実質賃金改善分を含めた3200円以上、時間給では20円以上の賃金改善を行なうことを求めていくことを確認。
さらに同時要求として、約10年間2000時間で高止まりしている年間総実労働時間の是正に向け、「時短」を2015年のキーワードの一つとし、力を入れていく。また、組織強化・拡大にも取り組み、組合員数を最終目標の10万人へ向け、2015年度は現行の4万1736人から4万3000人への増加をめざし、当面の目標とする5万人達成を目指していく。
▼2014秋闘・年間結果
2014年の秋闘で要求書を提出したのはホテル・レジャー業(ホ・レ業)38組合、観光・航空貨物業(観・航貨業)26組合の計64組合。春闘で継続協議となった9組合をあわせ、71組合が交渉の場を持った。そのうち、11月30日までに合意・妥結したのは43組合(ホ・レ業24組、観・航貨業19組合)で、さらに12月17日までに18組合(ホ・レ業8組、観・航貨業10組合)が合意した。
秋闘を実施した組合(51組合)の冬の一時金支給月数の平均は1.17か月で、ホ・レ業は1.08か月(前年比0.01か月減)、観・航貨業は1.19か月(0.11か月減)となった。全体の平均でも1.31か月(0.08か月減)で、前年よりも減少。ただし、年間でみると全体で2.86か月(0.08か月増)、ホ・レ業は2.27か月(0.07か月減)、観・航貨業は3.30か月(前年同)と前年並みを維持しており、夏の一時金が増加した分、冬が減少したとみている。
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