観光先進国フランス・ニースの観光施策を聞いてきた - 観光インフラ整備や満足度向上の施策事例

年間8000万人の外国人観光客を迎えるフランス。観光客数で世界トップを走り続けるフランスでも人気の都市が南仏ニースだ。都市別の観光客数では2013年の首位となったパリが2930万人、ニースはそれに続く2位の海外からの観光客数400万人を誇る。観光先進国フランスの中でも人気の高いニースの観光への取組みとはどのようなものなのかーー?

このほど現地から、この地域の観光産業を牽引するアルプ・マリティム県選出国民議会議員(ニース市観光・国際関係・街頭イベント担当助役ルディ・サル氏(Mr. Rudy Salles/写真左)とニース観光会議局 局長ドゥニ・ザノン氏(Mr. Denis Zanon/写真中央)が来日。ニースの観光産業への取組みについての考え方などを聞いた。(写真右はフランス観光開発機構フレデリック・メイエール氏)

ニースはコート・ダジュール地方の観光における拠点として、経済的な牽引役も果たす。ニースを訪れる年間 400 万人以上の観光客のうち、57%がフランス国外からの旅行者で、その収入が地域経済にもたらす効果は大きい。そして、特徴的なのは訪れた観光客の満足度の高さだ。97%の旅行者が滞在に「満足」あるいは「非常に満足」したと回答している。

こうした観光客の満足度が高い理由として、ニースが常に常に進化を続けている点があげられる。観光インフラの整備に積極的で、ルディ・サル議員は「観光はポテンシャルが高く、経済波及効果が高い産業。(これを推進するためには)他の産業と抱き合わせた考え方をしてはいけない」と語る。


プロジェクトを紹介するサイト

こうした考え方のもと、観光インフラの整備として新たな観光まちづくり「エコ・ヴァレー(Eco Vallée)」計画が進められている。空港正面の好立地を生かし、ビジネスエリアをメインに、住宅や商業エリア、複数の交通機関を連携する交通拠点が敷設されるもの。2012年に着工し、2025年の完成を目指したフランスが国益をかけたプロジェクトだという。新たな国際見本市会場も建設も進められており、すでにあるアクロポリス国際会議場とともに活用することでMICE都市としての充実を図る。

ルディ・サル議員は、このプロジェクトについて「古くある遺産を守りつつ、スマートシティを目指した革新が続いている。」と自信をみせる。住民と観光客の双方の利便性向上を目指して、市内交通のインフラにも言及。ニース国際空港と旧港エリア、行政エリアを 30 分以内で結ぶトラムの計画とともに、市バスの路線を再編成。トラムとバスのコネクションをスムーズにするなどで、国際競争力のある町として発展させていくという。



▼観光局が取組む旅行者の満足度向上

宿泊先やアクティビティと旅行者とのマッチングや認証制度など

ニース観光会議局ドゥニ・ザノ局長は、ニースが旅行者から人気を得る理由を「未来に向けて変貌を遂げる街」である点をあげる。そして、スマートシティとしての変化の他に、観光会議局の取組みで注目すべきなのが旅行者の満足度向上に向けた施策だ。観光局として、観光客の受け入れと確実なサービスを提供する手段として、観光客に質の高いサービスを保証するために、ニース観光会議局とパートナー企業が2011年から導入している。

一つ目は、ネットを利用した旅行者サポート。昨年より新たな「ニース・グリーター」制度を導入し、ボランティアとして住民参加型の観光政策を促進している。これは、地域住民が自分のお気入り場所やアクティビティを旅行者に紹介するもので、ニースでの人との触れ合いや体験を通して旅行者の満足度向上をめざしている。これまで、35名以上のグリーターが18か月で約500施設を含む約290の散策を提供してきたという。

また、市内の約200軒・約1万室の宿泊施設観光・会議局のサイトから予約できる仕組みも構築。ガイディングツアーやエクスカーションなどの提供もしており、旅行者へのサポート体制を強化した。

【YouTube動画】Nice Greeters (English version)

二つ目は、観光品質認証制度の導入や運営だ。ニースの観光資源の認知度を高め、クオリティを維持することが目的として行われている。例えば、ファミリー層に特化したサービスや、あらゆる年齢層も楽しめるイベントなどに付与される「ファミリー認証」。食の分野では、正しいレシピにのっとった本物のニース料理を提供する店を認定する「キュイジーヌ・ニッサルド(ニースの郷土料理)」もある。

こうした多角的な取組みを継続することが観光地の魅力を向上させる秘訣なのかもしれない。ドゥニ・ザノ局長は「あらゆる趣味の人が楽しめる、オフがない観光地にしていきたい」と今後の観光客の満足度向上に意欲的を示した。

(トラベルボイス編集部:山岡薫)

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