エコノミークラスでシャンパンが飲める航空会社は? 機内のワイン事情を調べてみた

百花繚乱!世界の機内食めぐり

機内食コラムを担当する旅行・グルメライターの古屋江美子です。
今回は機内食と同じくらい楽しみなお酒のラインナップについて。なかでもワインについての話題です。機内ではどんなワインが飲めるのでしょうか?

エコノミークラスでシャンパンが飲めるのは?

エコノミークラスの定番アルコールといえば、ビール、赤・白ワイン、あとはウィスキーやジン、ウォッカなどのスピリッツあたり。もちろん、ラインナップには各社差があります。

お酒好きに嬉しいのが、エコノミークラスでもシャンパンが飲めるエールフランス航空。同社では食前酒として、各種アルコールのほか、必ずフランスのシャンパンを用意しています。スパークリングワインではなく、フランスのシャンパンというところに同社のこだわりを感じますね。

実はエールフランスでは、シャンパン以外の赤・白ワインもフランス産のみ。産地は時期によって変わるので楽しみにしている乗客も多いとか。ちなみにワインとのマリアージュが楽しいチーズもフランスからの直輸入です。

エールフランスではエコノミークラスでもシャンパンを提供

日本路線のシャンパン消費量は、以前に比べて増えているそうです。これは日本人がよりシャンパンを好むようになったこと、また、エールフランスではシャンパンが全クラスでサービスされることが広く知られるようになったことが理由のようです。

他にも有料であればエコノミークラスでもシャンパンをオーダーできる航空会社はあります。たとえば、KLMオランダ航空では、エコノミークラス対象に事前予約で楽しめる有料のアラカルトミールを5種類用意しているのですが、その1つとして、スモールボトルのシャンパンがセットになった「シャンパン・デライト」(25ユーロ)を用意。シャンパンと好相性な前菜がセットになっているのが心をくすぐります。

KLMのシャンパン・デライト。前菜は、ニシンのキャビアとポム・ツァリーヌ(サワークリームとチャイブを添えたふわふわのマッシュポテト)

さらにKLMには「WANNA GIVES(ワナギヴズ)」というユニークなサービスがあります。これは、機上で搭乗客にサプライズプレゼントを渡せるサービスなのですが、さまざまなギフトの中にはグラスシャンパンのチョイスも。シャンパン付きの食事が機上でサプライズプレゼントされたら感激ですね。搭乗者の名前と便名・搭乗日がわかれば利用できます。

エミレーツ航空でも20年以上前からエコノミークラスでシャンパンを提供しています。同社ではサウジアラビア路線以外の全路線にて、200mlのシャンパンボトルを8ドルで提供。ちなみに現在の銘柄は「Moet & Chandon Brut Imperial NV」(※出荷状況や路線などの状況により異なる場合もあります)。エコノミークラスで1ヵ月に消費されるシャンパンの数は約3000本にも上るそうです。

JALで飲める「幻のシャンパン」とは?

JALもシャンパンのセレクトにはこだわっています。同社では2007年12月にプレミムエコノミーの設定路線で、シャンパンの提供をスタートさせました。

また、同じく2007年12月からは、国際線ファーストクラスの設定路線にてサロン社のシャンパンの提供を始めています。

サロン社といえば、フランス・シャンパーニュ地方のル・メニル・シュル・オジェ村に1900年代はじめに設立された有名なシャンパンメーカー。ぶどうが不作の年には生産を見合わせ、最適なぶどうが収穫された年しか「サロン」を作りません。さらに一般的なシャンパンの熟成期間が約3年間のところ、「サロン」は約10年間も熟成させるため、20世紀に醸造されたのは、わずか30数回のみ。年間生産量は約5万本程度と少なく、「幻のシャンパン」とも呼ばれます。

そんな希少なシャンパンを機上で提供している航空会社は世界中でJALだけ。サロン社の社長が実際にJALのサービスを受けた際、JALのシャンパンの温度管理やサーブ方法にとても感銘を受け、「JALであればサロンを提供してもよい」といってもらえたのだそうです。乗客の中には「このシャンパンを飲むためにJALのファーストクラスを選んだ」という人もいるほど、好評だそうです。

2002年ヴィンテージは一般販売に先駆けJALの機内で提供された

機内のワインはどうやって選ばれている?

機内で提供されるアルコールには様々な種類がありますが、セレクトに各社の個性が表れやすいのは、やはりシャンパンを含むワインではないでしょうか。

ワインのセレクトは著名なソムリエなどが担当することが多く、選りすぐりのワインが飲めるのも嬉しいところ。たとえばルフトハンザ ドイツ航空では、ソムリエ世界チャンピオンによるワインプログラム「ヴィノテークディスカバリー」が好評。

同社では、「マスター オブ ワイン」の称号をもち、1998年にドイツで初めてのソムリエ世界チャンピオンになったマルクス・デル・モネーゴ氏とともにワインを厳選しており、ファーストクラスは月替わり、ビジネスクラスは2ヶ月ごとにラインナップが変わります。一般的に機内では、酸味やタンニン(渋み)を感じやすく、甘味は弱く感じるといわれるため、そのあたりも考慮しながらワインがセレクトされています。

一方、少々ユニークな選考方法をしているのがANA。同社では最終選考に客室乗務員や社員も参加しています。実際の乗客はワインの専門家ばかりではないため、機内の客層に近づけて総合評価するためだそうです。

2015年 ANAのビジネスクラスのワインセレクション

昨年秋におこなわれた2015年用のワイン選考では、第一次選考として15カ国から約2400銘柄がエントリー。それを書類選考で300銘柄まで絞り、最終選考では2日間かけてブラインドテイスティングをおこないました。

参加者はANAの「THE CONNOISSEURS」メンバーである井上勝仁氏(シニアソムリエ)やネッド・グッドウィン氏(マスター・オブ・ワイン)、ソムリエ資格を持つ客室乗務員、機内食担当のシェフ、サービスを企画するANA社員など約40名です。

最終的にはブラインドテイスティングの結果で選考するので、味わいが最も重要視されますが、前提として必要本数や価格などの要件を満たすことは不可欠。ANAでは1年間に消費されるワインは約300万本にも上り、いくら味がよくても、ある程度安定して供給できないものは採用が難しいのです。

今回は国際線で33銘柄、国内線で2銘柄が選ばれ、日本のワインも赤・白、それぞれ1銘柄がラインナップ(赤/シャトーマルス・キュベ・プレステージ・日之城・メルロー&カベルネ 2011、白/アルガーノ・ボシケ 2013 勝沼醸造)。最近は日本のワインも注目を集めており、海外の航空会社で提供されることも増えています。

ANAワインセレクションでは毎年さまざまな産地からワインが選出される

各社のこだわりが光るワインのセレクション。ぜひ、ラインナップに注目したいですね。

※提供価格や銘柄は取材時(2015年5月)のものです。内容が変更になる場合もあるので、ご了承ください。

古屋 江美子(ふるや えみこ)

古屋 江美子(ふるや えみこ)

 旅行・グルメライター 旅行やグルメを中心に、ウェブサイトや雑誌、会員誌など様々な媒体で執筆。世界40カ国以上を旅し、海外レストランの取材経験も豊富。総合情報サイトAll Aboutでは「グルメ・各国料理(海外)」ガイドも務める。2010年の出産後は子連れ旅行などのジャンルにも活動の場を広げ、2012年には地元山梨県の「やまなし大使」に就任。

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