日本旅行業協会(JATA)は2015年7月1日付で、海外・国内・訪日旅行に関する政策提言を発表した。
海外旅行では、2020年の4000万人相互交流時代における海外旅行2000万人達成を念頭に、「ツーウェイツーリズムによる交流立国」を提案。訪日外国人のもたらす効果に着目した「観光立国」のアクションプランに対し、外国を訪問する日本人の経済、文化、国民性の影響力を戦略に捉えた体制整備を提案する。日本人のツーリズムに対する造詣を深めることは、インバウンドにおける競争力増強と国内旅行の振興にも有効だとする。
具体的には10項目(下記参照)をあげた。「休暇制度の普及」から、満18歳までの旅券の無料取得や高校修学旅行の行き先を海外へとする「若者の国際化支援」、日本語ガイド養成支援や観光インフラ整備開発援助対象国の拡大などの「ODAで観光ソフト・インフラ整備開発援助」など、幅広い観点が盛り込まれている。
訪日旅行では、数的目標が現実的となった現在では、今後は再訪に結びつく「質の向上」とリピーター増加による「地域分散」が重要と提言。喫緊の課題として、「貸切バス」「宿泊施設」「通訳案内士」の不足解消を提示。2000万人達成に向け、「訪日教育旅行」や「人材育成」としてのワーキングホリデー制度の拡張、訪日客と国民双方への「インバウンド啓発の必要性」なども指摘した。
国内旅行では、国の重要政策である「地方創生」の主要な解決策である「交流人口の拡大による地域活性化」を目指す方向性とした。地域と旅行会社など受地と発地の連携強化を念頭に、交流人口拡大に向けた13の課題と方向性を提示し、「地域版総合戦略」や「地域における長期的な観光基本計画の策定促進」、それを推進する「観光総合プラットフォーム」など12の施策を提言した。
【海外旅行振興に向けた提言】
-ツーウェイツーリズムによる交流立国の実現-
1.休暇制度の普及
(1)年次有給取得率向上と計画的長期休暇取得の普及
(2)ハッピーマンデーの維持継続
2.若者の国際化支援
(1)満18歳までの若者への旅券の無料取得
(2)留学支援制度拡大
(3)海外姉妹校提携推進
(4)高校修学旅行の行き先を海外へ
3.国際化による地方創生
(1)地方空港国際化促進、チャーター便の誘致
(2)地方でのクルーズ施設整備・改善
(3)文化・スポーツと観光との一体交流
(4)観光による地域ブランド化推進(モノの輸出とヒトの流入拡大)
4.安心安全な旅の推進
(1)旅行安全マネジメントの普及
観光庁と協力して、旅行業安全マネジメントの普及を通じて危機管理を旅行業
(2)中小旅行会社向け危機管理システムの導入
(3)国民の危機管理意識の啓発と業界内の定着
(4)被災地復興支援の積極的取組み
5.消費者保護の為の国際標準化と魅力的な旅の実現
6.ODAで観光ソフト・インフラ整備開発援助
(1)観光インフラ整備開発援助対象国の拡大
(2)日本語観光ガイド養成支援
(3)海外修学旅行制度のインフラ支援
7.国際観光市場におけるリーダーシップの向上(国際競争力の向上)
(1)国際観光会議等での日本の発言力の拡大
(2)関係省庁との連携による持続可能な観光発展への取組み
(3)方面別戦略計画
(4)国際観光統計の充実
8.グローバルビジネス人材の育成
(1)MICE人材の強化
(2)アジア太平洋地区共同コンベンションの誘致
(3)双方向による海外研修団の実施促進
(4)短期駐在制度の拡充やインターンシップの受け入れ
9.ジャパン・トラベル・ウィークを国際観光交流のプラットフォームへ
(1)ジャパン・トラベル・ウィークを世界3大旅行イベントへ
(2)国際観光会議の誘致
(3)ツーリズムEXPOジャパンの2019、2020の地方開催
(4)地域イベントの積極的な開催
10.自由な往来を担保する為のインフラ・制度の改善
(1)空港税などの諸税軽減・燃油サーチャージの運賃への一本化
(2)出入国に関する障害の除去とビザの軽減