ホテル・リザベーション・サービス(Hotel Reservation Service/HRS)日本代表の三島健氏は、このほど「グローバル OTA(オンライン旅行会社)の ビジネスモデルと事業戦略について」と題した講演を行った。三島氏の直近の前職はエクスペディア・ジャパンの日本代表。グローバルOTAの経験を踏まえ、オンライン旅行販売が「(Eコマース市場において)バーティカル・セグメントのひとつ」と語り、世界のOTAがユーザー指向の活動を実践している実態を紹介した。
Eコマース企業が最重要視することは、ユーザー動線で利便性を高め、コンバージョン(成約率)を高めることだ。このため、三島氏は最近のトレンドで「企業のトップがエンジニア出身の場合もある」ことを紹介。旅行はEコマース分野のひとつのカテゴリであり、OTAのコアな戦略として「テクノロジーとマーケティングしか考えていないともいえる(三島氏)」と話す。
この一例として、各社OTAではマーケティング部が収益管理している場合が多いことを紹介。多くのOTAが営業担当者不在で、売上げの多くの割合をマーケティング費用に充てている。マーケティングがセールスをしているという図式だ。
こうしたことから、OTAの人材採用では旅行の経験よりもマーケティングの経験が重視されているという。三島氏は、現在のグローバルOTAのトップらが、“旅行業界”“ホテル業界”などをバックグラウンドにもつ人物が少ないことに触れ、様々なバックグラウンドから専門性の高いスキルを持つ人材を登用するのがOTAの人材活用で特徴的であることを紹介した。
テクノロジーの分野では、コンバージョンを高めるために、膨大な回数のA/Bテスト(効果測定のための実験)が行われている。これは「信じられないほどのエネルギーを使っている(三島氏)」といい、その結果の判断には“主観”が関与しない。見た目デザインではなくUI(ユーザーインターフェイス)と数値的な結果を最優先し、ひとつの国のためにその動線を変えないという考え方だ。逆に、「主観をどれだけ排除できるかがカギ(三島氏)」だという。
こうした活動指針をもつ世界展開するOTAに、日本のOTAを含む旅行業が拮抗するためにはどうすればいいのか?
三島氏は、日本のオペレーションや戦略を海外に持ち込むことではなく、新たな事業モデルを組み立てることを提案した。フォーカスライトの最新統計によると、オンライン旅行市場規模は米国で6兆円、日本が2兆9千億円。日本のオンライン販売比率は33%に達しており、三島氏はこの市場が今後まだ伸びることを指摘した。
この講演は、TTCJ(ツーリズム・トランスポーテーション・クラブ・オブ・ジャパン)の月例会で行われたもの。TTCJは、国内外旅行、観光産業の発展・調和に寄与し、国際間の相互理解に貢献することを目的として活動している観光関連団体で、月例会は業界を問わず参加機会を提供している。
- トラベルボイス編集部:山岡薫