世界の富裕層が求める「旅館」、フランス拠点のホテル連合にトレンドと取り組みを聞いてきた

観光大国フランスを拠点とする独立系ホテル連合のルレ・エ・シャトー。全世界で約540軒の個性的な高級ホテルや一流レストランが加盟し、リピーター率6割という富裕層から支持を得てきた。日本では修善寺温泉「あさば」、箱根温泉「強羅花壇」、東京の「オテル・ドゥ・ミクニ」などが名を連ねる。そんな同社が新たなメンバーとして狙うのが、日本の旅館だ。その背景や富裕者層が求める旅行のポイントをジャン・フランソワ・フェレCEOに聞いた。

フェレ氏は、世界の富裕層が旅に求めるポイントが3つあると指摘する。それは「体験」、「本物」、「個人への対応(パーソナライズ化)」。こうしたトレンドは一般旅行者でも顕著になってきているが、特に富裕者層では重要との考えだ。

フェレ氏は富裕者層が「金額に関係ない、価値ある体験を求めている」と話す。「本物」では、旅先の土地に紐づいた文化を背景にした食材やストーリーに価値を見出す富裕層が増加しているといい、日本の旅館が「本物」「体験」の2つのポイントを満たす施設とみている。「旅館には、本当の日本が詰まっている」とフェレ氏は強く強調した。

こうしたことから、同社では日本のメンバーで旅館を重要視。昨年は京都の旅館が新メンバーとして発表することができた。今後は、さらなる旅館メンバーの拡大を求めて、同社が毎年行う年次総会を今年は日本で開催することを決めたという。こうした活動で、「世界の旅行者に伝統的な日本の体験を提供できる」と意気込む。


日本は「夢の旅行先」、富裕者層が求める旅館をメンバーに

フェレCEOによると、ルレ・エ・シャトーの中心顧客は米国人とフランス人。米国人とフランス人がともに20%、続いて英国10%、ドイツ8%と続く。シェアが高いとはいえないものの、伸び率が高いのが南米とアジア太平洋地域だという。

顧客の伸びでは、「ヨーロッパは安定へ。米国はまだ伸びる余地があり、一番伸びるのはアジア地域」と予測する。現在のところ、香港・台湾の顧客の増加が目立ってきており、「この地域の富裕層は、私たちの価値をわかっている」と語る。中国本土の富裕層へのアプローチでは、彼らが好むワインをきっかけに評価を上げ、ポテンシャルの高い市場の成熟を待つ考えだ。

こうした中、デスティネーションとしての日本への要望は増加の一途をだどっているという。「日本はブーム、夢の渡航先と見られている」とみており、言葉や距離の壁を越えてでも行きたい旅先となっていることを、日本のメンバー増加を目指す理由として挙げた。

富裕者層へのサービスでテクノロジー活用は?

フェレ氏に、世界のホテルで導入が検討されているスマートキー(鍵なしでスマホなどが鍵の代わりになるもの)やスマホのSMSなどでスタッフとコミュニケーションをとる技術の導入について聞いてみた。

フェレ氏は苦笑しながら「non」と即答。「考えられない」という。

同社の考える“サービス”とは、お金で買えない体験を提供することだといい、そこでは人間同士のコンタクトを重要視している。シェフと朝の買い出しや料理教室などを積極的にプログラムとして提供しており、フェレ氏は「最新の技術はお金で開発できるが、富裕者層はお金で買えない何かを探している。」と語る。

一方、ウェブサイトなどIT関連の投資はしていく方針だ。現在、「個人への対応」の部分でウェブサイトに表示されるコンテンツをユーザー毎に最適化していく開発をしているところ。他社サイトに依存せず、顧客からの独自のレビュー(クチコミ)を投稿してもらう仕組みも構築しているという。リアルな対面でのサービスと、ウェブサービスの両輪を富裕者層のトレンドにあわせていくことで、今後もさらなるファンづくりをしていく方針だ。

トラベルボイス編集部 山岡薫

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