サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は2016年2月9日、サービス連合として初の「第1回観光政策フォーラム」を開催した。2015年に発表した政策提言の発信と、「産」「学」「官」の関係深化を目的に開催したもの。サービス連合会長の後藤常康氏は挨拶で、「観光を21世紀の基幹産業にするためには働く者が自ら、その意義を発信することが重要なことだと認識した」と開催の意図を説明。「社会の公器としての役割を果たした上で、労働環境や社会的地位の向上に努めたい」と語った。
基調講演では、日本総合研究所理事長で多摩大学学長の寺島実郎氏が、「観光立国の実現にむけ、『産』『学』『官』が行うべきこと」をテーマに登壇。寺島氏は、急増する訪日客の“爆買い”に注目が集まる中、「2泊3日・3万円のツアーを3000万人増やしても観光は産業にならない」と述べ、観光を高度化させる重要性を強調した。そのポイントの1つとして、次世代ICT革命である「IoTがこれからの観光に必要」と指摘。「UberやAirbnbをどう捉えるかが、観光の高付加価値化を左右する」とも語った。
続くパネルディスカッションでは、観光庁・審議官の古澤ゆり氏、日本旅行業協会(JATA)事務局次長の池田伸之氏、東洋大学国際地域学部国際観光学科准教授の矢ケ崎紀子氏、井門観光研究所代表取締役の井門隆夫氏が登壇。サービス連合の政策提言のなかから、「人財確保・育成」と「休日・休暇改革」について、「産」「学」「官」のそれぞれの立場から現状認識と課題提示を行なった。
例えば「休日・休暇改革」では、観光庁の古澤氏が政府として「ハッピーマンデー」など力を入れており、観光庁でも国民の休暇取得の機運を高めることを目的に、ワークライフバランスの観点で「ポジティブ・オフ」や「家族の時間作りプロジェクト」に取り組んでいることを説明。JATA池田氏が旅行業界も重視しており、「社員旅行の税務処理日数の増加」や「社員旅行の家族同行の経費の損金算入」など、さまざまな角度で提言をしていることを説明した。
ただし、東洋大学の矢ヶ崎氏は学校側の視点では大学では現在、祝日はなく、小学校でも東京都を中心に土曜授業が増えており、「家族旅行の拡大再生産の時間が狭まっている」と指摘。さらに有休の取得率を業種別で見ると観光産業が低いことも示し、休暇取得を推進する業界としても取り組みを強める必要があるとも語った。井門観光研究所の井門氏は、業務終了後は「休日休暇」であるとし、出張時にその地域の魅力を業界として積極的に発信することなどを提案した。
一連のプログラムを終え、サービス連合では「観光産業の課題は多いが、それに直視をしつつ産学官が知恵を出しあって産業の高度化に取り組む必要性が語られた」とし、今回のテーマ「今何をすべきか」の重要なヒントが得られたとして議論をまとめた。