観光庁、JTBらの情報流出で旅行各社と情報共有 -東京五輪に向けてサイバー攻撃の可能性高まる

観光庁はJTBや札幌通運で発生した情報流出に伴い、2016年6月28日に該当事案の情報共有と再発防止を目的とする「第1回 観光庁・旅行業界情報共有会議」を開催した。旅行業界から約100名が参加した。

冒頭の挨拶で観光庁長官の田村明比古氏は、旅行サービスのEコマースが拡大傾向にあるなか、「旅行業界は金融機関とともにサイバー攻撃を受けやすい業界。セキュリティ上の危機が直ちに現実の危機に繋がる。実際に情報流出後に顧客数が減少し、年度決算で赤字転落した事例もある」と述べ、経営トップが情報セキュリティに対する強い意識を持ち、早急に社内全体の体制整備に取り組むよう、サイバーセキュリティの重要性を訴えた。

その上で「今回の事例は2社だけの問題ではない。業界全体で緊急に取り組むべき課題」と述べ、「再発防止に万全を期し、業界全体の信頼回復に努めてほしい」と呼びかけた。

今回の情報会議では、JTBと札幌通運が6月24日観光庁に提出した報告書をもとに、その概要を説明。これに対し、参加した旅行会社からは、各社のセキュリティレベルや具体的な対応に関する質問がされたという。

このほか、国土交通省総合政策局情報政策本部が早期に行なうべき体制整備の内容や事案発生時の対応について説明。また、外部専門家による情報セキュリティを取り巻く状況と事業者の対応についての解説が行なわれた。情報共有会議については後日、議事を公開することになっている。


東京五輪に向けてサイバー攻撃の可能性高まる

観光庁観光産業課長の西海重和氏によると、観光庁がサイバーセキュリティ対策を目的とする情報共有の場を設けるのは今回が初めて。これまで国土交通省の所管業界では、鉄道・航空・物流の巨大システムで動く3業種で行なわれていたが、旅行業界についても「力を入れないといけない時に来た」と強調する。

以前から旅行・観光関連での情報流出事案はあったが、今回のJTBは情報流出として国内最大規模であることに加え、旅行業界がサイバー攻撃を受けやすくなったこと、さらに世界最大のイベントである東京オリンピックに向けてさらなる攻撃の可能性が高まっていることが、従来以上に危機意識を高める理由だ。今回の情報共有会議でもロンドンオリンピックでは開催期間中に約2億回のサイバー攻撃を受けたことが発表され、「多くの人と情報が集まる機会に狙われるのは当然」だという。

観光庁はこれまで、旅行業界で災害やテロなどの治安対策、ツアーバス事故などの安全対策といった重要事案の発生にあわせて対策を検討する体制をとってきたが、情報セキュリティに関しても「同等の危機意識が必要」との考え。業界内にその重要性を伝えるためにも、サイバーセキュリティに関する情報共有会議を定期的に開催していく。今回の参加者には情報セキュリティ対策に関するアンケートを実施しており、観光庁として業界の実態と課題を把握するとともに、専門家と再発防止策などを検討する。

なお、観光庁では「旅行業界情報流出事案検討会」を設置しており、今回の情報共有の内容やアンケート結果等も踏まえながら、7月中に課題検証と再発防止策を取りまとめる予定だ。

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http://www.travelvoice.jp/20160622-69133

取材:山田紀子(旅行ジャーナリスト)

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