今年1月に施行した「改正旅行業法」で知っておきたいポイントは? 日本旅行業協会(JATA)の解説を聞いてきた

2018年1月4日に「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」が施行し、改正旅行業法の下で事業営業がはじまった。具体的にどう変わるのか?このほど、日本旅行業協会(JATA)が専門誌記者向けに行なった概要説明から、改めて今回の旅行業法改正を理解するための背景と変更点、今後の影響をまとめてみた。

規制の緩和と強化、目的は旅行の質の向上

今回の旅行業法改正のポイントは2つ。(1)地域を巡る旅行の促進と(2)旅行の安全・取引の公正確保等だ。

旅行業法はもともと、消費者保護を目的に制定されたもので、改正の都度、消費者保護が拡充されてきた。「営業保証金(弁済制度)」や、募集型/受注型の企画旅行における「旅程保証制度」や「特別補償制度」などはその例だ。この流れを汲みながらも、近年の改正では国の観光政策の強化に沿い、観光先進国に向けた制度の見直しがされている。今回も、観光先進国に向けた規制緩和と規制強化の両面が盛り込まれている。

規制緩和は、(1)地域を巡る旅行の促進を目的とする改正部分。受入側の地域による現地発着の着地型旅行が販売されやすい環境整備を目指すもので、大きな変更点は着地型旅行を企画販売できる地域限定旅行業の登録要件を緩和したこと。

地域限定旅行業は2012年の業法改正時に、旅行の範囲を事業所が所在する市町村と隣接地域などに限定して創設した旅行業種別。参入障壁を低くするため、営業保証金の供託額が他の旅行業よりも低額の設定としたが、今回の改正では、事業所に置く旅行業務取扱管理者についても専用の資格制度を創設。限定区域内での営業であることを考慮し、業務に不要な内容を外した試験制度とするほか、複数営業所における管理者の兼務も可能とした。

また、旅行の範囲も新幹線の駅や空港などの交通拠点を考慮し、観光庁長官が個別具体的に認める地域も範囲に含まれることになった。

業法改正のポイントを説明をした、法務・コンプライアンス室室長の堀江眞一氏(右)、理事・事務局長の越智越智良典氏(左)

一方、規制が強化されるのは、(2)旅行の安全・取引の公正確保等を目的とする改正部分。大きな変更が生じるのは、旅行サービス手配(ランドオペレーター)に関わる事業だ。

これは軽井沢スキーバス事故を受け、総合的な対策として検討されたもの。旅行業登録のない国内/訪日旅行の手配事業者が対象で、今回の改正で初めて登録制度を導入。今後は旅行サービス手配業も旅行業法の下に営業をすることになる。

これに伴い、旅行サービス手配業務取扱管理者の制度や、契約時の書面交付・保存の義務付け、苦情の多かった土産物店への連れまわしなどの禁止事項も盛り込まれた。書面の交付については手配を依頼した旅行業者も、手配業者や旅行を販売する旅行者との契約で書面の交付が必要になる。

また、業務改善命令・登録取り消しなどの処分・罰則などが整備され、違反行為者の公表制度も創設。無登録で手配業を行なった場合は公表処分(法第71条)や、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金(法第74条第6号)の罰則が設けられた。万が一、旅行業者が無登録の旅行サービス手配業に手配を依頼し、該当事業者が無登録であることを知って取引をした場合は、無登録営業の罪に対する幇助罪(刑法63条)に問われることになる。

業法改正への期待と課題

JATA理事・事務局長の越智良典氏によると、規制緩和となった地域限定旅行業はもともと、地域事業者の要望を受けて創出されたものだった。当初は地域の宿泊業者などが地域のバス会社などを使った地域ならではの旅行商品の販売を想定していたが、開始から5年が経ち、最近では、現地ガイドが自分の企画やイベントを売り込むために地域限定旅行業を取得するなど、想定を超えた活用も出てきたという。

今回、要件が緩和されたことで、ビジネスチャンスとして捉え、さらに柔軟なアイディアを持った新規事業者が地域から参入する可能性も高まりそうだ。

一方で、地域限定旅行業は営業範囲が限定された旅行業だが、旅行業種別による営業内容の違いを旅行者がどれくらい認知し、理解できているのか、法制度と消費者認識に乖離があるのも現状だ。実際、現在も旅行業登録のない事業者や個人が募集するツアーが散見されるが、取締りは難しいのが実態。消費者は旅行業者でないことを知らずに利用しているケースも多い。旅行業法は、旅行事業者を規制する法律だが、広く一般に周知していくことも、本来の目的達成に必要であるといえるだろう。

なお、今年は旅行業法改正のほか6月15日には「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の施行が予定されており、旅行業者にとっては法令関係の再確認が必須。住宅宿泊事業法では、民泊サービスの代理・媒介をする場合は「住宅宿泊仲介業者」の登録が必要だが、旅行業者は登録不要で民泊仲介が可能。ただし、取扱いの際には企画旅行に組み込む場合「届出住宅(住宅宿泊)」の表示が必要で、旅程保証は民宿に準じる。

手配旅行では民泊事業者から収受する手数料の掲示が義務付けられる。手数料の掲示義務以外は住宅宿泊事業法の適用は受けないものの、ホテル・旅館とは異なる対応が必要になることは覚えておきたい。

記事:山田紀子

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