世界24カ国約70カ所にリゾートを展開するクラブメッドが、2018年は新たに日本におけるブランドの変革・再生に挑もうとしている。最注目は2017年12月に日本国内3カ所目のリゾート施設として開業した「クラブメッド・北海道 トマム」だ。これから迎えるサマーシーズンも、この時期、ここでしかできない体験を考案し、新しい旅のスタイルを提供しようとしている。そんな国内外のリゾート情報から、ファミリーポジショニング戦略や同社が新しく導入するホールセールの仕組みまで、2018年の海外旅行を最大限楽しむために見逃せない戦略を同社マーケティング本部長、井上忠浩氏に聞いてきた。
最注目はサマーシーズンのトマム、5つのエクスペリエンスが新登場
ふかふかのパウダースノーを満喫して、和とモダンが融合したマウンテンリゾートでバカンス三昧――。1日最大1500人が利用できる北海道最大の国際スキーオペレーターとして展開し、北海道産にこだわった料理や星野リゾートが運営する温泉プール・ミナミナビーチやアイスヴィレッジなどの施設をそろえて昨年開業したのが「クラブメッド・北海道 トマム」。
このリゾートのポテンシャルは雪山だけでなく、日本の夏山ならではの魅力も存分に体験できること。6月から10月までのサマーシーズンは、“マスト トライ エクスペリエンス”を開催予定。マウンテンアカデミー、サーカスアカデミー、フレイバーズオブ北海道(北海道の美食体験)、カラーズオブ北海道(北海道の色彩体験)、日本最大級屋内ウェイブプールというテーマに基づいたアクティビティを用意し、「日本ならではの体験ができる山岳リゾート」(井上氏)として、国内外の旅行者を取り込む。
同社の日本市場に対する期待は、広大な平野や山脈に恵まれ、四季折々の景観が満喫できる「クラブメッド・北海道 サホロ」を18年夏季にリノベーションし、施設の向上を図る計画からもうかがい知ることができる。
また、日本人に人気のバリ島やビンタン島をはじめとした世界各地のリゾートでもトマムと同じく“マスト トライ エクスペリエンス”を拡充。たとえば、バリ島ではリゾート内で鑑賞できるバリニーズダンス、ファミリーやカップルなどセグメント別のクッキングクラスなど、その土地ならではの文化や生活習慣にふれられるアクティビティを用意する。
2018年からは各リゾート別の日本語アプリを本格導入。2017年から実施している同社のデジタルマーケティング施策「ハッピー・デジタル」の一環で、日替わりで用意する各種プログラム情報をタイムリーに配信し、旅行者がタビマエやタビナカにいつでもチェックできるようにした。SNSも積極的に活用し、旅行者との双方向コミュニケーションを図っていく。
ファミリーポジショニング戦略を推進、ファミリー国内1位に輝いた石垣島
こうしたクラブメッドの躍進ぶりは、2017年におけるファミリー層の拡大にも如実に表れている。クラブメッドというと、ファミリー、カップル、ひとり旅、友人同士の4セグメントが主顧客層だが、日本では新婚旅行のイメージが強く、ファミリーの拡大がかねてからの課題だった。実際、世界平均では全体の70%をファミリーが占めているのに対し、日本市場は45~48%にとどまっていいたという。それが、前述のアップスケールやマスト トライ エクスペリエンスの施策が国内外で奏功したことで、ファミリー層のシェアが63~64%にまで上昇。「ファミリーは一度体験すると翌年も利用してもらえるケースが高く、リピーターを獲得していくためにも重要なセグメントだ」と井上氏は語る。
こうしたファミリーポジショニング戦略を証明するのが、「クラブメッド石垣島」の支持率の高さである。世界最大の旅行口コミ数を誇るトリップアドバイザーの「2018年世界で人気急上昇中の観光地」で1位に選ばれたのが石垣島。なかでも、クラブメッド石垣島は同社の「トラベラーズチョイス・ホテルアワード2018」のファミリー部門で日本1位の名誉に輝いた。
井上氏は「クラブメッドはキッズクラブのパイオニアとして、常に最良のキッズケアができるよう年齢別に施設やサービスを整えてきた。石垣島リゾートでは、1~2歳の赤ちゃん対象の“ベビーウェルカム”サービスを設け、ミレニアルファミリーの確保にも力を入れている」と語る。クラブメッド石垣島はさらなるアップグレートを図るために、2019年をめどに改装し、アジアを代表するリゾートとしてさらに快適性を高める方針だ。
日本新発売のリゾートが続々登場、カップルに最適のモルディブ
2018年はこうしたファミリーポジショニングを引き続き推進する一方で、カップル向けに「エクスクルーシブ・コレクション」のブランド展開を強化する。カンクン、フランスアルプス、ヨーロッパリゾート、アメリカ、アフリカなどのリゾートの日本販売を強化するのに加え、クラブメッドを代表するエクスクルーシブ・コレクションがモルディブの「フィノール ヴィラ」だ。
12歳以上が宿泊でき、52棟すべてがプライベートプール付きのヴィラタイプ。「クラブメッドというとアクティビティや食事をともにするフレンドリーなG.O(ジーオー/ジェントルオーガナイザーの略)のイメージが強いかもしれないが、フィノール ヴィラでは、適度な距離感を保ちつつ、バトラーとして滞在中のさまざまなリクエストに対応することで差別化している」(井上氏)。
一方、モルディブのもう一つのリゾート、カニフィノールはキッズクラブやダイビングセンターを新設したのに加え、水上コテージを改装し対象年齢を従来の14歳以上から8歳以下に引き下げるなど、ファミリーの取り込みにも力を入れている。
客室在庫のアロットを廃止、最適な客室をリアルタイム提供
一方で、こうしたリゾートのアップグレードを後押ししているのが、同社のデジタルマーケティング戦略である。2018年度上期は、宿泊予約システムをJTBワールドバケーションズ(JTBWV)やエイチ・アイ・エス(HIS)などのシステムと統合。具体的には、クラブメッドのホテル予約システムを両社のシステムとつなぐことで、客室在庫をリアルタイムで提供。消費者はJTBWVやHISのツアーでも、予約時に希望の客室を最低な価格で選ぶことができるようになる。
クラブメッドは以前から直接販売だけでなく、旅行会社向けのBtoBビジネスに力を入れており、2017年にはさらに営業部隊を再編。大手旅行会社の経営企画部や商品造成部、地方のヘッドオフィス、地域の旅行店舗のそれぞれを対象とした3段階に組織を改編して各社の販売計画に合った的確な販売支援を強化するとともに、商品造成と流通の仕組みを抜本的に見直した。
これまで客室在庫の一定数を旅行会社に預けてきた仕組み(アロットメント)を廃止してリアルタイムで同社予約システムから提供するのに加え、航空座席は仕入れ力の強いJTBWV、HISを利用することで価格訴求力を高める。両社のダイナミック・パッケージとして販売するほか、パンフレットも専用商品を投入していく。
クラブメッドの井上氏は「従来のパッケージツアーは、ホテルからランドオペレーター、企画、印刷、店舗まで複数の組織を経由していたが、中間を一括してハイブリッド化することで、お客様が買いたいものを買いたいときに最適の価格で選べる仕組みを構築していきたい。価格訴求力も高まることで、旅行会社ともWin-Winの関係を実現できるだろう」と力を込める。
同社は昨年10月から自社でもダイナミック・パッケージの販売を開始したが、旅行会社向けのこうした取り組みは世界のオフィスでも例がなく、日本ならではの流通経路を活かした戦略だ。
旅行形態が多様化し、ネット経由や直販が台頭するなど環境が激変するなかで、旅行会社とのパイプを活かした新たな流通開発、デジタルマーケティングなど、既存戦略にとらわれず、顧客開拓に注力するクラブメッド。今後の展開にも注目だ。
広告:クラブメッド(https://www.clubmed.co.jp/)
フリーコール:0120-790-863
記事:トラベルボイス企画部、REGION