グーグルがメタサーチに参入してから、すでに5年以上が経つ。それでも旅行業界にとって、グーグルは引き続き、常に警戒を怠ってはいけない相手だ。
フォーカスライトでは早い段階から、グーグルの旅行関連プロダクトが進化していく様子を追いかけ、旅行に関する検索・ショッピング・購買といった各フェーズにおいて拡大する同社の存在感に注目してきた。2017年には、メタサーチを対象に深く掘り下げた調査から、以下の2つの傾向が明らかになった。
- 全般的にグーグル利用はますます広がっているが、なかでも顕著なのが航空券の検索。トラフィックやリファラル数では、すでにカヤックを追い抜いたようだ。
- グーグル・フライト&ホテルズからのトラフィックは、OTA各社より、航空会社やホテルへと流れる方がずっと多くなっている。
旅行メタサーチとは、結局、ググること?
2017年に開催されたカンファレンスで、フォーカスライトのリサーチマネジャーのアリス・ジョン氏が行ったプレゼンテーションを動画で紹介しよう。
「Phocuswright Research: Travel Metasearch - Just Google It?」(Youtube:約12分)
先日、米国マイアミで開催された会議「セーバー・オンライン・エグゼクティブ・サミット(Sabre's Online Executive Summit)」では、激変するオンライン旅行のファネル(入り口)に関するパネルディスカッションのモデレーター役を務めたが、ここでもグーグルは大きな話題となった。フォーカスライトの2017年度調査では、クリックストリーム(サイト訪問者がどのページを見ていたかの軌跡)解析を手がけるジャンプショット(Jumpshot)社と一緒に、最近のトレンドを分析したが、同様の傾向が2018年も続いている。同社のディレン・ベイカー最高経営責任者(CEO)は、セーバー・サミットで次の2つのスライドを紹介して見せた。
このチャートを見ると、「グーグル・フライト」のサイトからアメリカン航空とユナイテッド航空、米国の二大航空会社へと流れるリファラルトラフィック数が増えていることがよく分かる。両社いずれのケースでも、グーグルからのリファラル数の方が、カヤックからのものより圧倒的に多い。
一方、ホテル関連メタサーチの分野では、「グーグル・ホテルズ」はまだ比較的、小さいプレイヤーに甘んじているのが現状だ。しかし利用は増加傾向にあり、特にホテルへの送客源として存在感を放つ。実際、ホテルチェーン各社から見たグーグルの位置づけを考えるなら、ホテルのオンライン検索・ショッピング・購買サイクルでOTAが発揮する強大な影響力を軽減する操作レバーのような存在かもしれない。「グーグル・ホテルズ」からホテルチェーンへのリファラルは、2017年末から急増している。
航空券とホテルという、旅行業界における2つの主要セグメントにおいて、グーグルの影響力が拡大している現状は、何を示唆するのか。オンライン旅行のファネルにおいて、従来以上に大きな役割を果たそうとする同社の意向は明確だ。OTA、メタサーチブランド、ホテルや航空会社のデジタルマーケティング担当など、オンライン旅行に関係するあらゆる人にとって、やはりグーグルは、相応に頭を悩ませておくべき相手なのだ。
※編集部注:この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事について、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。
※オリジナル記事:Google: Travel's closely watched obsession
著者:ダグラス・クインビー(Douglas Quinby)