世界最大級の観光産業向け国際会議ITBベルリンが3月6日に開幕した。今回は、マレーシアが公式パートナー国となり、10日までの期間、181カ国から1万を超える企業がそれぞれの製品やサービスを展示するほか、コンベンションプログラムでは400人近いスピーカーが登壇し、オーバーツーリズム、顧客ニーズの変化、新しい形の交通システム、環境サステナビリティなど現在の観光業界が抱える課題について議論が行われる。
今年の特長のひとつが、急速な成長を見せている最新技術を用いたタビナカ企業(Technology, Tours & Activities: TTA)分野の展示が初めて行われること。世界中の大手企業ならびにスタートアップ企業が、その革新的なサービスを紹介する。また、会場にはVRラボも登場。VRおよびARの最新アプリケーションやプロジェクトが展示される。さらに、今回はますます旅行ビジネスで存在感を増している決済サービス企業も多く集結した。ITBベルリンでのトラベル・テクノロジーの展示スペースは前年比20%拡大し、過去最大となっている。
世界的な課題なっているオーバーツーリズムに関する議論が行われるのも今回の大きなトピックのひとつ。有識者や企業による議論が行われるほか、ITBベルリンとトラベルズーが共同で行った市場調査が発表される。
ITB ベルリンが事前に公表したヨーロッパ、北米、アジアにおける調査結果の概要によると、69%の旅行者が環境保護を重要な課題として認識。特に、ドイツ(74%)、スペイン(73%)、中国(88%)では環境保護の認識が高い結果となった。また、調査対象の54%が、過去に旅行者の多さにストレスを感じたことがあると回答。その割合は、中国(84%)、フランス(61%)、ドイツ(60%)で高かった。さらに、55%が「旅行者が多ければ、違うデスティネーションを選ぶ」と回答し、その比率は中国では72%にものぼった。興味深いのは、多くの調査対象者が「旅行者が少ないのであれば、余分な出費をする用意がある」と答えたこと。ドイツの場合、1週間の旅行で許容される追加額について、76%が100〜300ユーロと回答。500ユーロと回答した人も20%におよんだ。
2018年の世界の海外旅行者数は前年比5.5%、アシア太平洋は7%増でトップ
ITBベルリンの開催に合わせて、世界的な旅行市場調査会社IPKインターナショナルは2018年の世界の旅行統計を発表。それによると、世界の海外旅行者数は前年比5.5%増の14億人に達した。
各エリアのアウトバウンド市場を見てみると、アジア太平洋が最大の伸び率で同7%増。南米の同6%増、北米と欧州の同5%増を上回った。
一方、インバウンド市場ではアジアと欧州が同6%増となった一方、北米は同3%増にとどまった。国別のインバウンド市場を見ると、過去数年ブームが続いていたスペインが停滞した一方、トルコが好調で2018年は2017年よりも850万人多い旅行者を受け入れた。
また、旅行形態別では、レジャー旅行は好調に推移したものの、ビジネス旅行は下降傾向。MICEは引き続き成長基調が続いている。世界的に海外旅行者の旅行日数は伸び、現地消費額も増加。2018年の海外旅行の売上高は同8%増となった。
2019年については、世界経済の成長率が鈍化すると見込まれることから、海外旅行市場も2018年の成長率を下回る同4%増と予想。エリア別ではアジア太平洋が同6%増、南北アメリカが同5%増。欧州は3%増にとどまるとしている。
※編集部 注:トラベルボイスは、ITBベルリンの「公式メディアパートナー」として提携しています。