「LINEトラベルjp」を運営するベンチャーリパブリックは2019年6月6日、地域の観光マーケティング支援を行なう「LINEトラベルjp コンテンツスタジオ」の設立を発表した。自治体やDMO、企業に対して、「LINEトラベルjp」のプラットフォームを活用し、PRの露出先だけではなく、現地取材から始まる記事の制作、拡散から、その結果分析まで行なう、一気通貫のコンテンツマーケティング支援を提供する専門チームだ。
「当社は旅行比較サービスで成長してきましたが、やはり旅行の価格が着目されがちで、付加価値のある旅行や観光地にも注目してもらうためにはどうしたらよいか。その課題感を基点に2012年、私が中心となってメディアを立ち上げ、マーケティング支援をしてきました。そこで培ったノウハウを駆使し、地域や観光団体が抱える課題をデジタルマーケティングで幅広に支援していきます」と話すトラベル事業部営業企画グループマネージャー・メディアコンテンツ担当の櫻井研吾氏に、「LINEトラベルjp コンテンツスタジオ」の取り組みについて聞いてきた。
情報発信に終わらない、結果に繋げるマーケティングを
従来の地域の魅力発信というと、旅行会社への商品造成、ファムトリップなどを通じた拡販支援、マスメディアを通じたPR活動が主流だった。しかし、「LINEトラベルjpコンテンツスタジオ」が提供するのは、広告費換算やページビュー数の報告など単なる媒体としての役割を超え、旅行会社まかせの拡販支援で終わらない、認知拡大から拡販まで一気通貫のデスティネーションマーケティング。
具体的には、運営する旅行比較サイト「LINEトラベルjp」と連動した旅行メディアをベースに、記事(コンテンツ)制作はもちろん、自治体やDMO、観光局に対する営業・コンサルティングから、企画提案、検索エンジンやSNSも含めたカスタマージャーニーに応じた閲覧フローも同時に提案。記事の発信後も、ページを訪れた読者の属性、流入状況、旅行商品に到達するコンバージョンの分析を行ない、その結果をレポートする。近々には、現地の集客状況の分析も行なう予定だ。
つまり、コンテンツマーケティング、インフルエンサーマーケティング、メディアプロモーションなどを統合的に推進し、施策を組んでいく。地域のPRや広告の掲載で終わらせず、効果が見えるマーケティングに昇華させるのが、マーケティング支援におけるLINEトラベルjpの考え方だ。
櫻井氏は、「政府が掲げる日本版DMO戦略にもあるように、日本でもデータに基づく明確なコンセプトを持ったマーケティングの必要性が高まっています。デジタルを活用することで、より効果が見えやすく、持続的に展開できなければならないはずです」と説明する。
実は、同社はこれまでもメディア部門を中心に、地域の観光マーケティング支援を行ない、状況に応じて営業や技術開発、調査分析などを社内の各部署とともに取り組んできた。例えば同社が支援した千葉県佐倉市では、取り組みがきっかけで歴史的な竹林のある風景「ひよどり坂」が「フォトジェニックなスポット」として人気に火が付き、Instagramの投稿数が4~5倍に増加。観光客の訪問も増加し、発信した記事を基点に市内各所への周遊も進んでいる。海外旅行の例では、ブランドUSAとの取り組みで、同社経由での米国方面ツアーの商品閲覧数が130%増で伸びたという。
今回設置したLINEトラベルjpコンテンツスタジオは、こうしたスキームを具現化したもの。あわせて人材を補強し、専任担当者も設置した。「コンテンツスタジオ」は、ワシントンポスト紙など欧米のメディアを中心に立ち上げが相次いでいるが、日本で観光領域に特化して展開するのは同社が初めてになる。
独自ライターと掲載媒体、送客窓口を持つ強み
さらに同社の特徴は、コンテンツマーケティングの主要要素であるコンテンツの制作から発信・流通・旅行商品のコンバージョンまで、全て同社のアセットとして一気通貫で兼ね備えていることだ。櫻井氏はその強みのポイントは「信頼ある個人の発信」「深掘りされたコンテンツ」「旅行者が集まるチャネル」「旅行比較との連動」「LINEと連動したプッシュ配信」の5つに代表されると話す。
例えば「信頼ある個人の発信」とは、同社サイトで人気のコンテンツ「旅行ガイド」記事を作る「ナビゲーター」。プロライターではなく、あえて旅好きのセミプロライターによる記事を重視している。その特徴は、表面的な観光情報ではなく、旅行者としての目線で現地を体験し、「そこで体験できること」「魅力的だと感じるもの」を深堀して発信すること。ナビゲーターの記事を見た地域担当者が「こういう風に切り取ってくれるのか」と、地域の魅力を再認識することも少なくない。
栃木県矢板市の“幻の滝”「おしらじの滝」、北海道名寄市の「日本最北のブルーベリー狩り」など、観光地としての認知は低かったのにネットで火が付き、観光客が訪れるようになった地域が増えている。光がありながらも埋もれていた観光地を新名所に押し上げるきっかけとして、「純粋に旅行が好きで、地域の魅力発信することに喜びを感じるナビゲーターならではの力」(櫻井氏)と自負する。
現在、LINEトラベルjpには温泉ソムリエや歴史マニアなど、ユニークな肩書を持つナビゲーターが、日本人で約500人、外国人で約200人いる。メディアがプロダクション集団ともいえるライターコミュニティを抱えているのは珍しいが、それはSNS時代に、個人の発信する情報が信頼される世の中になることを予見して考えたものだという。
こうして作られた独自記事を掲載するメディアの多様さも、ベンチャーリパブリックならではの特徴。月間訪問者数2000万人のLINEトラベルjp(ウェブ版)のほか、LINE NEWSにおけるベンチャーリパブリックの公式アカウント、インバウンド誘致で有力な英語圏向けメディア「Trip101」などさまざまな媒体を、地域の目的に合わせて提案し、PR代理店のように掲載スペースの提案や買い付けを行なう。
令和への改元で初の10連休となった2019年ゴールデンウイーク(GW)では、タイミングを逃さずに関連した記事を制作・配信。検索エンジンやスマートフォンでの情報探索を意識した記事の編集から配信のタイミングまで、ネットを知り尽くした対応ができるのも、同社ならではだ。櫻井氏は、「GWはイベントや日帰りスポットに関するアクセス数が驚異的に伸びましたが、そうした世間の関心やシーズナリーにあわせてコンテンツを用意し、即時性を活かせるLINE公式アカウントやSNSを使ったプッシュ配信も行ないます。課題を踏まえて複数の戦術を組みあわせ、プランを練って提案できるのも、我々の強みです」とアピールする。
さらに、基盤事業である旅行商品比較とも連動。認知拡大とともに喚起した需要を、現地訪問に必要な旅行商品の購入入り口に誘導できる。コンバージョンに繋がる導線を持っているのもLINEトラベルjpならではの大きな強み。PRやプロモーションの費用対効果を求められる現場からの注目も高いという。
マーケティングで現状を変える
ナビゲーターが作成した記事やコンテンツは、同社編集部での審査、ガイドラインチェックを経て配信される。過去に、取材なしで事実関係の確認が不十分なままに書かれたネット記事で事実誤認や信憑性の問題が指摘されたサイトがあったが、LINEトラベルjpはこうした問題が表面化する前から編集部を構え、独自取材による記事制作と誠実な情報発信にこだわってきた。その上でいま、最も注意することのひとつに、“ステマ(ステルスマーケティング)”ととられないコンテンツ配信があるという。
広告表記を行なわずに情報発信を行なうことを望む広告主も少なからず存在するが、それは炎上に繋がることもある。そうなっては、予算と時間をかけて実施したせっかくのマーケティング施策が逆効果だ。だからこそ、「特に宿泊費や渡航費など高額相当の利害関係が成立するのであれば、クレジットとして協力してもらった地域や団体の名前を表記することを徹底しています」(櫻井氏)といい、クライアントにもその重要性を伝えるようにしているという。
ベンチャーリパブリックではこれまでも、日本人の国内旅行や海外旅行、訪日旅行の誘客を目指す自治体やDMO、海外の政府観光局に対するマーケティング支援を行なってきた。先ごろには広域DMOである岐阜観光連盟、群馬県観光物産国際協会と、それぞれに大規模なタイアップを開始。ソリューションの提供対象が広がってきている。
地域の観光発展には、観光開発と認知向上の両輪が欠かせない。ただし、櫻井氏によると「稼げる観光地経営が求められるなか、地域は限りある予算と時間を踏まえ、どうしても観光開発を優先する傾向が強い」と話す。
櫻井氏は、その考えに至る状況に理解を示しつつも、「それでもやはり、人々に情報が届かなければ、観光開発をしても旅行者の来訪はありません。誘客という変化が起こることで改善をすることができますが、その変化を生むのがマーケティングなのです」と力を込める。「実施した分析結果を、新たな観光コンテンツの開発に繋げることもできます。様々なデスティネーションに足を運ぶ人を増やすことで、結果的に我々の利益にも繋がる。観光地の変化を生むマーケティングを、ともに開発していきたいと考えています」。
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記事:トラベルボイス企画部