欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、2022年3月から現行の入国制限解除国リストを廃止するように加盟国に求めた。EU域外からの不要不急の旅行について、その枠組みを簡素化するためのもの。現在このリストには約20カ国が掲載されている。加盟国がこの勧告を認めれば、EU承認のワクチンの接種を完了した旅行者は、国・地域に関わらずEU加盟国への入国が可能になる。
また、欧州委員会は、ワクチンの有効期限として、1回目の接種完了から9ヶ月間と設定した。
さらに、欧州医薬品庁によって承認されていなくても、世界保健機関(WHO)が緊急使用として認めたワクチンの接種者についても、来年1月10日から入国を認めるべきと勧告した。このワクチンには中国のシノフォームやシノヴァクも含まれることから、中国人旅行者の受け入れも認めることになる。ただし、出発前にPCR検査の陰性証明を取得する必要がある。
各国が規制強化、EUデジタル証明書の有効性に疑問も
一方で、欧州では感染者が急増しており、各国が規制を強化する動きを見せている。WHOによると、11月第3週の欧州の感染者数は前週比11%増。緊急措置を取らなければ、来春までに新たに70万人の死者が出る可能性があると警告している。
そのなかで、EUは、現在27カ国が導入している「EUデジタルCOVID-19証明書」は、その有効性が失われる恐れがあると警告している。この証明書には、ワクチン接種記録のほか、回復状況、直近の陰性証明などが含まれるが、感染拡大により各国の対応が分かれている。ドイツの一部の州では、ワクチン接種の証明と毎日の陰性証明を求めている。イタリアでは来月から、レジャー施設の利用にワクチン接種を義務化する。
EU司法委員長のディディエ・レンデルス氏は「EUデジタルCOVID-19証明書の保有者は、原則として、EUのどこから来たとしても、追加の制限の対象とすべきではない」と話すが、加盟国の現状はそう簡単な話ではなくなっている。