日本旅行業協会(JATA)と日本外航客船協会(JOPA)、日本のクルーズ客船3社(郵船クルーズ、商船三井客船、日本クルーズ客船)は、クルーズ旅行の再活性化を目指し、協働キャンペーンを実施する。対象クルーズの乗船客に、次回のクルーズで利用できる旅行券・総額180万円(1組あたり20万円)を抽選でプレゼントする。日本のクルーズ3社がタッグを組み、業界団体とともにキャンペーンを打ち出すのは初めてのこと。
コロナで日本の旅行市場は大打撃を受けたが、行動制限や自粛要請のない今夏は、国内旅行はもとより、航空機利用の海外旅行も再開しつつある。しかし、クルーズ旅行は日本船による国内の港に寄港する旅程のクルーズのみの運航で、日本発着の外航クルーズは許可が出ず、いまだ再開のめどがたっていない。
JATAで海外旅行を推進するアウトバウンド促進協議会(JOTC)のクルーズ旅行推進部会部会長・松浦賢太郎氏は、回復に向かおうとする旅行市場の中で、クルーズ旅行が取り残されている現状を説明。「現在は日本船による国内クルーズの運航に留まっており、以前の盛況を取り戻せていない」と話し、「この状況を打破したい。マーケットの復興と、船旅の安心安全を体験していただくためにも、多くの方に関心を持っていただきたい」と、キャンペーンの趣旨を話した。
JATA副会長の酒井淳氏は、日本のクルーズ旅行の復興には、水際対策がさらに緩和される必要があることを説明。日本のクルーズ人口はコロナ前の2019年に35万7000人となり、3年連続で30万人を超えて推移する成長市場で、そのうち3分の2を日本の出入国手続きの必要な外航クルーズ(海外フライ&クルーズ含む)が占めていた。
酒井氏は「旅行業界としても一番大きなターゲット」と、外航クルーズの重要性を強調。酒井氏は、日本政府が8月24日に発表した緩和策について「G7諸国レベルには程遠い」と話し、引き続き完全撤廃を要望していく考えを示した。
周囲の反対でクルーズ断念、コロナ対応の検疫体制も課題
また、松浦氏は、クルーズ市場に表れた変化も説明。クルーズ市場はシニアを中心とするリピーターなど、底堅い需要が基盤にあるのが特徴だが、松浦氏は「離れる顧客がいる」と明かした。「家族や周囲の反対があるので当分乗らない」という理由も多く、コロナ禍当初、クルーズが象徴的に報道された印象が残り、クルーズ旅行をあきらめている人もいるようだ。
松浦氏はこうした状況を踏まえ、「感染対策を徹底していることもアピールする。コロナ禍でクルーズから離れたお客様にもう一度振り向いていただくことは、キャンペーンの目的の1つ」と説明した。
感染対策について、JOPA常務理事・事務局長の松本隆司氏は、JOPAが日本船の国内クルーズを対象に感染症対策を踏まえた運航ガイドラインを策定していることを説明。2020年10月の第1版からその時々の状況にきめ細かく対応しており、最新の第7版では感染者が発生しても安全運航が継続できる内容に刷新した。
現在は日本船の外航クルーズと国際定期航路についても、早期再開に向けガイドライン策定を進めているところ。さらに、外国船による日本発着クルーズの再開に向けたガイドラインの策定も、「検討が進んでいると聞いている」という。
一方で松本氏は、日本発着の外航クルーズが始まらない要因の一つに、コロナ対応を踏まえた検疫体制の実情があることを明かした。「港にまで手が回らない状況がある。対策は政府と慎重に進めつつ、外航クルーズを何とか実現にこぎつけたい」と話した。
松浦氏は、外航クルーズ再開に向けた現状を踏まえ、「いま、動いている日本船社の国内クルーズでキャンペーンをおこない、民間からムーブメントを作っていきたい」と話した。「ライバル同士が垣根を超えたキャンペーンをすることで、消費者にも業界全体にもクルーズ旅行の現状に気づいていただき、振り向いてもらわなければいけない」と述べ、今後は外国船社も含め、オールジャパンでのキャンペーン実施に意欲を示した。
歌手の麻倉未稀さんが応援
同キャンペーンにはサポーターには、船上のエンターテイメントゲストとしてクルーズ乗船経験の多い歌手の麻倉未稀さんを起用。記者会見には麻倉さんも参加し、船上から見るの景色の素晴らしさなどクルーズならではの魅力を話した。麻倉さんは9月24日、ツーリズムエキスポジャパンの会場でもクルーズトークとライブをおこなう。
今回実施するキャンペーンの詳細は以下の特設サイトへ。