EYストラテジー・アンド・コンサルティング(EYSC)は、コロナ禍で変化した観光客の行動と消費、今後の観光需要の回復に関する分析結果をまとめ、レポートを発表した。各種の公開調査や報道資料のほか、EYSCが2022年6月に国内の男女4000人を対象に実施した調査結果をもとに取りまとめた。
EYSCストラテジック・インパクト・パートナーの平林知高氏は、同レポートについて、全国旅行支援や水際措置の大幅な緩和で国内と訪日の需要回復が見込まれる情勢になったことに触れ、「コロナ禍を今一度、振り返る必要がある」と説明。このタイミングで発表する意義を強調した。
調査は、目的地の感染者数が何人になると旅行を控えるかという「リスク感応度」に分けて、コロナ禍の観光行動を分析した。結果によると、リスクを許容する人ほど平均旅行回数は多く、かつ、年別では2021年、2022年と直近になるほどその回数は増えた。他県への旅行についても、リスクを許容する人の方が実施した割合が大きい結果となった。
全体的にはコロナ禍でマイクロツーリズムが拡大。2020年7月のGoToトラベル開始前の同年6月までに増加していたようだ。コロナ禍では東京や大阪などの大都市への旅行が控えられていたが、今後(2022年6月~2022年12月)は盛り返し、特に大阪に関してはコロナ前の水準に戻る勢いがあるという。
また、全国を対象とした旅行支援の再開が旅行意欲に与える影響についても調査。ここでもリスク許容者ほど意欲が高く、16ポイント程度の需要押上げ効果が見込まれる。SNS分析ツールで各種の旅行支援に対する世間の注目度を調べたところ、全国を対象としたGoTo期間の注目度は高かったが、それ以降は県民割・ブロック割の実施期間を含めても、注目度が停滞していた。
インバウンドの回復については、UNWTOの統計を用いて日本より先に本格的な水際対策を緩和した国の観光客数の推移を分析。日本と同様に中国が主要マーケットであるシンガポール(水際緩和2022年5月)とタイ(同2022年6月)では、それぞれ緩和した翌月に2019年比35%弱まで回復していることから、日本も2022年11月には同水準まで回復が期待できるとした。
このほかレポートでは、観光庁の調査をもとにしたコロナ禍の観光消費の動向や日本への旅行意欲、円安の影響などについても触れている。
平林氏は今回の調査分析で、コロナ禍では(1)観光産業におけるデジタル、サステナビリティの重要性が加速、(2)マイクロツーリズムの浸透、(3)産業全体の重要課題は人材不足、であることが確認されたと説明。特にマイクロツーリズムに関しては、今後のトレンドとして身近な地域で新しい魅力を発見して楽しむ「ツーリズムの日常化」が進むと予想。「地域がありのままの姿を魅力とし、ストーリーを仕立てることを考える機会になっている」との考えを示している。
これらを踏まえ、レポートでは今後の観光推進には、観光客や投資を呼び込むためにもDXで地域の可視化と生産性向上に取り組み、魅力の再構築をして、それらの果実で地域の観光関連産業を働き甲斐のある場とする取り組みが不可欠、との考えをまとめた。
レポート詳細は以下で確認ができる。