富裕層旅行国際会議「ILTM(International Luxury Travel Market)」日本事務局はこのほど、「グローバル ラグジュアリー トラベル市場のトレンドと展望」をテーマとしたウェビナーを開催。同事務局による「Buzz vs Reality」の調査結果をはじめ、富裕層旅行の最新トレンドをレポートした。
ウェビナーでは、ポートフォリオ・ディレクターのアリソン・ギルモア氏が 「パンデミックの間、お金を使う楽しみを失っていた富裕層は、新しい充実した方法で、スタイリッシュな旅を再開したいと思っている。多くが『費用は惜しまない』あるいは『時間は貴重』だと考えている」と説明。そのうえで、コロナ禍を経て「人とのつながりが不可欠な要素になっている」と指摘した。
調査では、世界の富裕層の50%以上が1週間以上の休暇でゆっくり時間を過ごすことを好み、56%が新しい場所や体験を好むと回答。ギルモア氏は「特にメンタルヘルスへの関心が高まっている」と説明した。2022年、世界の旅行者の4分の1がウェルネスを目的とした休暇を取得。特に45歳以下がこのタイプの旅行に積極的だったという。また、引き続き健康と安全に対する意識は高く、54%が旅行を計画する際に「優先する事項」として挙げた。
このほか、半数以上が高級な「モノ」ではなく、贅沢な「体験」にお金を使うことを好むと答えていることから、ギルモア氏は事業者に対して「体験を向上させるテクノロジーの活用が欠かせない」と提言した。
サステナブル旅行で追加料金の許容は半数以上に
一方、コロナ禍を経て変化した傾向も明らかになった。39%が「社交的な旅を望む」と回答しているように、ソーシャルディスタンスを保つプライバシーの重要性は下がり、他の人と一緒に時間を過ごしたと思う旅行者が確実に増えている。
また、パンデミック中は国内旅行で満足していた富裕層旅行者の関心が、明らかに海外旅行に移っていると指摘。調査結果からは、半数以上が「短距離の旅行を複数するよりも、少ないフライトでの長期滞在」を好み、56%が「これまで行ったことない場所での新しい旅を求めている」こともわかった。
さらに、富裕層旅行では「SNSやインフルエンサーは必ずしも影響力のあるメディアにはならない」との結果も明らかに。一方で、富裕層の10人に9人が「旅行予約で部分的にでも旅行代理店を活用する」と回答していることから、ギルモア氏は「旅行代理店やトラベルアドバイザーが旅行のプランニングで重要な役割となっている」と指摘した。
旅行トレンドのひとつとなっているサステナビリティについては、富裕層の94%が「サステナブル旅行のために多少高くても払う」と回答。51%がサステナビリティのためなら「20%以上の追加料金を払う用意がある」と答え、45%が「今後サステナブルでエコなバケーションを期待している」と回答した。
なお、ILTMシンガポールは2023年6月19日~22日、フラッグシップイベントとなるILTMカンヌは2023年12月4日~7日に開催される。
自己変革のための徹底した体験
ウェビナーでは、ILTMジャパンオフィシャルメディアのオータパブリケイションズ国際事業部TARO金納ななえ編集長も「メディアから見る世界のラグジュアリートラベルトレンド」を紹介。主に「自己変革」と「贅沢の限りを尽くした旅」を注目ポイントとして挙げた。
自己変革として富裕層旅行者が求めるものとして、これまでのウェルネス、サステナビリティ、マインドフルネスから、メンタル、フィジカル、スピリチュアルに移行しているとしたうえで、「価値観における自己変革のために徹底した体験を求める傾向が現れている」と指摘した。
また、贅沢な旅として、サプライヤーによるブランドとのコラボレーションをトレンドのひとつとして説明した。例えば、ホテルとハイブランド。世界では、サルヴァトーレ・フェラガモ、ジョルジオ・アルマーニなどがホテルを運営し、日本でも「ブルガリホテル東京」がオープンしている。
金納氏は「ブランドは、モノだけでなく、コトに関わることで、ブランド独自の世界観の確立をしている。その世界観を共有することで、ファンベースを広げている」と説明。そのうえで、富裕層旅行者に対しては、ドラマチックな演出など次世代型の共有体験で訴求力が高まると見通した。