ハワイ州から、ハワイ州議会の上院・下院議員、ハワイ州産業経済開発観光局(DBEDT)、ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)の総勢13人からなる議員団が来日し、日本市場との関係や山火事で甚大な被害を受けたマウイ島の現状について説明した。
ミシェル・キダニ上院議員は、マウイ島について「被災地のラハイナなど西マウイ以外は観光客を受け入れている。西マウイの住民はすべてを失ったが、仕事まで失うわけにはいかない」と話し、観光による支援を訴えた。マウイ島⻄部はハワイの観光経済の15%を占めており、⽕災の影響で1⽇あたり900万ドル(約13億円)の損失が推定されているという。
今年1月にHTAの最高管理責任者に就任したダニエル・ナーホオピイ氏は、被災後マウイ島を数回に渡って訪れ、地元コミュニティの要望を聞いた。そのうえで、「マウイ島の人たちのために、西マウイ以外のエリアを訪れてもらい、彼らを観光でサポートしてほしい」と話した。
マウイ島への日本人旅行者のシェアは全体の2%ほどと高い割合ではないが、ハワイ州観光局(HTJ)ミツエ・ヴァーレイ局長は「ハワイ州全体への日本人旅行者数を回復させることで、HTAとともにマウイ島の復興に繋げていきたい」との考え。そのうえで、「西マウイ以外のマウイ島と隣島は安全で、観光客の受け入れを歓迎していることを伝えていく」と話した。
また、DBEDT事業開発・⽀援部⾨管理官のデニス・リン氏は、「日本からの支援に感謝している」と表明した。HTJでは8月17日から日本円での義援金受付を開始。HTJヴァーレイ氏によると、特設サイト開設1週間で数千万円の寄付が集まったという。8月31日時点の総額は5222万2054円。さらに、日本旅行業協会(JATA)や関連企業からの支援の動きも広がっている。
現地では、9月1日に追悼儀式が行われ、今後復興に向けた動きが本格化する。HTAも⽶国市場からマウイ島への旅⾏需要の回復を優先し、「マラマ・マウイキャンペーン」を中⼼とした復興計画に向けて260万ドル(約3億8000万円)の資金拠出を承認した。
世界中で自然災害が発生しているなか、今後は安全な旅行がますます重要になってくる。ヴァーレイ氏は「改めて、ハワイは安全で誰でも行けるデスティネーションであることを掘り起こしていく」とコメント。ハワイでは、現地日本メディア、領事館、企業、旅行団体などとの連携で日本人旅行者向けの緊急連絡体制が整っていることを強調した。
このほか、HTAナーホオピイ氏は「将来的には、スマートツーリズムを推進していく」と発言。既存のアプリや予約システムと連動させて、情報の配信などで旅行者向けに安全確認の仕組みを構築していく考えを示した。
経済・観光で日本との関係強化を
今回の議員団の来日の目的は、広島県と東京都への表敬と視察。広島県では湯﨑知事を表敬訪問したほか、ハワイ州の姉妹校である広島県⽴広島井⼝⾼等学校、広島平和記念公園などを訪れた。また、東京では「Tokyo Food Lab(東京フードラボ)」を視察したほか、「第96回東京インターナショナル・ギフト・ショー秋2023」にも参加した。
ダニエル・ホルト下院議員は「農業やテクノロジーなどで、日本との経済関係を強化していきたい」と話す。
観光面については、短期的には日本の旅行業界との協力で日本市場の回復を進める(ヴァーレイ氏)。ハワイ州の日本人旅行者数は回復基調にあるものの、7月は2019年同月比で39.3%にとどまっている。また、座席供給量についても10月以降に増便や機材の大型化が予定されているものの、2019年レベルにはまだ遠い。
そのなかで、HTJは、新しい広告キャンペーン「ビューティフル・ハワイ」を開始し、リカバリーのメッセージを打ち出している。特に注力するのが重要の高いロマンスマーケット。近頃、⽇本ハワイウェディング協会(JHWA)と協業し、「ココロつながるHAWAII ~Heart & Heart~」プロジェクトを発⾜させた。
また、姉妹都市交流などを通じた教育旅行にも注目。「年齢に関係なく、『学びの宝庫』としてのハワイを訴求していく」(ヴァーレイ氏)。今年7月にはホノルルで「⽇本・ハワイ姉妹州姉妹都市サミット」が開催された。
このほか、中長期的には、地元コミュニティとの関係を重視しながら、再生型観光の啓発活動を継続していく方針だ。
※ドル円換算は1ドル146円でトラヘルボイス編集部が算出