日本旅館協会会長の大西雅之氏が、2024年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
大西氏は、2023年はコロナ禍での経験を教訓に変え、不測の事態の備えを進めてきた1年だったと述懐。その1つとして、この数年間で過大な負債を抱えた宿泊施設にとって金融機関との交流の場が重要であるとの考えから、「宿泊業界の観光と金融に関する全国懇談会」を開催したことを紹介し、2024年も同様の取り組みを継続していくとした。
インバウンドはコロナ前の水準に戻りつつあるが、地域や業態で大きな格差も生まれている。大西氏は、地方への誘客拡大のために、こうした課題の克服が2024年の重要なテーマになると指摘。訪れる人だけでなく、そこで働く人達にも夢を与えられる業界になるべく、2024年も活動を続けていくと意気込んだ。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
年頭所感 「夢あふれる1年に」
新年あけましておめでとうございます。
月日の流れは年々はやくなっていくものと思っていましたが、コロナが始まってからの数年間は例外でした。今振り返ってみても大変長く苦しい道のりで、もう二度とこんな思いはしたくないというのが本音です。
自然災害や疫病は、私たちの都合などお構いなしに猛威を振るいます。2023年は、コロナ禍での経験を教訓に変え、不測の事態への備えを進めてきた1年間でした。
その目玉と言えるのが、昨年9月に仙台市秋保温泉で開催した「宿泊業界の観光と金融に関する全国懇談会」です。関係省庁や金融機関の皆さま、そして私たち宿泊事業者が膝を突き合わせて宿泊業界の現状と未来について語り合い、大変有意義な懇談会となりました。
インバウンドはコロナ前の水準に戻りつつありますが、地域や業態で大きな格差も生まれてきています。地方への誘客拡大など、この課題の克服が今年の重要なテーマと考えています。
そして、この数年間で抱えた過大な負債の返済に業界の将来がかかっています。息の長い支援がぜひとも必要です。われわれの現状を関係各所に訴えるために、全国さまざまな場所で金融機関等との交流の場を持つことが必要であると考え、本年は九州にて全国懇談会を開催する予定となっています。昨年度同様、またはそれ以上の大盛会となるよう、準備を進めてまいります。
業界発展のために、協会としては委員会活動を中心に各事業に取り組んでいます。
旅行需要回復によって加速した人手不足の問題については、労務委員会が外国人材の活用に向けて積極的に動いています。昨年度に引き続いて、国内外での特定技能分野の試験機会の拡大、また、現地送り出し機関や国内の登録支援機関、監理団体と宿泊事業者のマッチング会を開催いたします。
政策委員会には業界の諸課題を多く担務してもらっていますが、中でも現地決済型ふるさと納税「ふるさtoらべる事業」の推進に力を入れています。丸紅株式会社と連携しながら導入自治体数と参加施設の拡大を図ってまいります。
EC戦略・デジタル化推進委員会では、事前決済型のふるさと納税のスキームを構築しています。OTA各社が参入しているふるさと納税市場に直販という選択肢を持たせることを目的としており、ふるさtoらべると合わせて推進してまいります。また、キャッシュレス決済の拡大に合わせて、クレジットカード手数料の引き下げにも業界全体で力を合わせて取り組まなくてはなりません。引き続き委員会で検討してまいります。
そして未来ビジョン委員会では、宿泊業を「夢のある業界」にするための指針を作成しています。われわれが目指すべきゴールを明確にし、そこに向かってすべきことを示していきたいと考えております。
5年後、10年後、そしてその先の明るい日本の姿を想像すると、そこには必ず国内外からの観光客や、賑わいに包まれる観光地の姿があります。私たち宿泊業界は、わが国の「夢」そのものです。訪れる人だけでなく、そこで働く人達にも夢を与えられるような業界になるべく、本年も活動を重ねてまいります。
夢があふれる1年間になることを願いながら、皆さまからのさらなるご指導、ご鞭撻をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。本年もよろしくお願い申し上げます。
一般社団法人 日本旅館協会
会長 大西雅之