中国人の海外旅行者の回復遅れ、2019年水準まで、さらに5年との見方も、一方でビザ免除政策の国は活況

写真:ロイター通信

中国人海外旅行の回復が進まない。主にコスト上昇とビザ取得の難しさが原因だ。厳格なゼロコロナ政策を撤廃してから18ヶ月が経つが、その回復は期待よりも遅く、一方で国内旅行は急増している。

長引く不動産不況、高い失業率などによって、中国人はより倹約的になり、そのため、旅行から車、コーヒー、衣服に至るまであらゆるもので値引き合戦が行われている。

2023年、中国人の海外旅行は累計8700万回となったが、これはコロナ前の2019年より40%減。業界関係者は2月の春節以降、旅行のペースが鈍っていると明かしている。UN Tourism(国連世界観光機関)のデータによると、昨年の中国人旅行者の支出も2019年比で24%減少。中国市場の回復の遅れは、パンデミック前に中国人旅行者の人気旅行先だったフランス、オーストラリア、米国などの国に暗い影を落としている。

中国未来研究協会観光部門は、中国の海外旅行がパンデミック前の水準に回復するには、さらに5年かかる可能性があると予測している。中国元の切り下げと米国および欧州のインフレが二重の打撃になっているという。

香港を拠点とするコンサルティング会社オリバー・ワイマンは先月、中国の海外旅行の回復見通しを昨年の予測より半年遅い2025年後半に後ろ倒しにした。

「消費者は昨年よりもさらにコスト意識が高まっている。それが旅行のトレンドにも影響している」と同社のイムケ・ウーターズ氏は言う。

大手航空データ分析OAGによると、今夏、中国の空港を発着するフライトの8%が国際便で、2022年からわずか1%しか増加していない。

オーストラリア観光交通フォーラムのマージー・オズモンド最高経営責任者は、コロナ以前はオーストラリアにとって中国は最大の供給市場だったが、現在4位まで落ちたと話す。3月の到着数は2019年3月より53%減少した。

空港運営会社ADPによると、フランスへの中国人旅行者は、2019年の水準のわずか28.5%にしか達していない。

米中路線の座席供給量は、両国間の政治的緊張が高まっていることから、2019年の水準から80%以上減少したまま。米国への中国人観光客が完全に回復するのは2026年になるとの見方もある。

さらに高まる国内旅行需要、海外はビザ不要国へ

一方、国内旅行市場は活況を呈している。今年のメーデーの5連休では、2019年を20%以上、上回る過去最多の2億9500万人が国内旅行に出かけた。

大手航空データ分析シリウムによると、5月の国内航空座席数は2019年の同月より16%増加した一方、国際線は30%減少した。

オリバー・ワイマンは、国境が再開されて以来、初めて2023年に海外旅行をした人の40%が、主に欧州でビザ取得に時間がかかることから、今年は海外旅行をしないと答えているという。

海外旅行では、ビザ免除政策を採用しているシンガポール、マレーシア、タイ、アラブ首長国連邦、カタール、サウジアラビアなどで中国人観光客が大幅に増加している。これらの国では航空便の座席数も増加している。日本は、ビザ取得が必要だが、円安に後押しされ、今年、中国人旅行者が急増している。

観光情報会社Check-In Asiaは「中国の海外旅行市場は再形成され始めている」と見ている。

※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。

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