ベネチアの観光客向け入域料徴収、来年は倍の10ユーロに引き上げか、一方でオーバーツーリズムは解消せず、住民の抗議強まる

イタリア・ベネチア市では、歴史地区エリアへの入域の際に5ユーロ(約860円)を徴収する実証プログラムを終了した。このプログラムは2024年4月25日から7月中旬まで、オーバーツーリズム対策として実施。同市は、実証期間中の収入は約220万ユーロ(約3.8億円)となったことから、このプログラムを延長する意向を示したが、反対派は「この実証は失敗に終わった」と反発している。

7月13日、数十人の活動家がサンタ・ルチア駅の外に集まり、「期待されていたように観光客を思いとどまらせることはできなかった」と抗議。野党の市議会議員ジョバンニ・アンドレア・マルティーニ氏も「このプログラムは失敗だ」と語気を強める。実証期間の最初の11日間で、市内には1日平均7万5000人の観光客が流入。マルティーニ氏は、モバイルデータに基づいて市が提供した数字を引用して、「これは指標となる2023年の休日よりも1日あたり1万人も多い」と非難した。

AP通信がベネチア市から提供されたデータを基に算出したところによると、実証期間の2か月半で45万人近くの観光客がこの料金を支払った。当局によると、徴収金はゴミの撤去や運河の維持管理などに使われるとしている。

この入域料は、すでに宿泊税を課せられているベネチア市内のホテルに宿泊する人には適用されなかった。また、14歳未満の子供、この地域の住民、学生、労働者、親戚を訪ねる人々なども免除された。

ベネチア市観光担当トップのシモーネ・ベントゥリーニ氏は、このプログラムを継続し、さらに強化することを示唆している。市の広報担当者によると、来年、この金額を2倍の10ユーロ(約1720円)に引き上げる案が検討されているという。

当初は違反者には高額の罰金を課すとしていたが、結局、罰金が課されたケースはなかった。市当局は、これは緩やかな規制を望んでいたためだとしている。

反対派は、狭い歩道と水上タクシーは相変わらず混雑しており、住民にとって住みやすい街には依然として程遠いと強調。短期賃貸(民泊)の制限を設けるなど歴史地区内の居住政策を進めるべきだと主張している。現在、公式の住民の数よりも多くの観光客用ベッドがあり、住民数は過去最低の5万人となっている。

市議会議員のマルティーニ氏は「これを10ユーロに引き上げたところで、まったく無意味だ。これではベネチアは博物館になってしまう」と警鐘を鳴らす。

抗議行動で掲げられた横断幕の多くには、2020年に市が導入した電子監視およびビデオ監視システムに対する懸念も多く、プラカードには個人データの使用とデータプライバシーの欠如に対する抗議が多く見られた。このシステムは観光管理政策の根幹となるものだ。

ある住民は、「入域料はメディア向けのアピールにすぎない。市民を監視し、管理するシステムこそ注視すべきことだ」と嘆く。

※ユーロ円換算は1ユーロ172円でトラへベルボイス編集部が算出

※本記事は、AP通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました

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