米大統領選の結果が観光産業に与える影響は? ジャンク手数料からビザ、DMO対応まで考察【外電】

2024年11月の米大統領選挙で、大統領候補のトランプ氏とハリス氏、どちらの候補者が勝利するかは、今後4年間の観光産業を大きく左右する。米観光産業ニュース「Skift(スキフト)」が、旅行業界に与える影響について考察した。

トランプ氏が大統領に返り咲いた場合

トランプ氏が大統領になった場合、ビザ、規制、環境などに関する前政権時代の政策から推測すると、まず運輸省の新しいジャンク料金開示規則が撤回される可能性がある。連邦官報に掲載された規則の本文には、トランプ政権による2017年の大統領令が発効される前に、同様の規則を撤回したことが記されている。

また、ビザの取得に今以上に時間がかかることも考えられる。トランプ政権の初期には、国務省のビザ処理職員の採用が凍結された。一方で、審査手続きを厳格化。多くの申請者、特に安全保障上の懸念が高いとされる国からの申請者に対するビザ発行の遅延や拒否が発生した。

さらに、渡航禁止令が復活する可能性もある。2017年1月、トランプ政権は大統領令により、イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの国民の米国への入国を制限した。その後、バイデン政権によってこれらの禁止令は撤回された。

観光分野では、米国のDMOに対する強硬姿勢の可能性もある。トランプ政権は初期、ブランドUSAへの資金提供を廃止しようとした。2018年の予算案では、トランプ氏はブランドUSAへの政府の年間助成金を削減し、国土安全保障省に回すことを提案した。最終的には、ブランドUSAは2027年まで再認可されたという経緯がある。

トランプ氏は「アメリカを再び偉大にする」という政策を掲げて選挙活動を継続している。「アメリカ第一」の姿勢は、同盟国の多くに不評で、国際協力の縮小や一部の国との関係悪化につながる可能性があり、世界の国際観光市場に影響を及ぼすかもしれない。

このほか、トランプ氏は再び、さまざまなインフラプロジェクトへの投資を拡大させるかもしれない。さらに、2017年6月1日にパリ気候協定から米国を脱退させたように、環境規制の緩和に踏み切る可能性もある。

ハリス氏が新大統領になった場合

ハリス氏がトランプ氏に勝利し、新大統領になった場合はどうか。

まず航空業界では、合併に対する強硬姿勢は変わらないと見られる。バイデン政権は反トラスト法の執行に強硬な姿勢を示しており、ジェットブルーとスピリットの合併を阻止するために訴訟を起こして勝訴した。現在、バイデン政権は今後数か月以内にアラスカ航空とハワイアン航空の合併に関する決定を発表すると見込まれている。

また、ビザ発行処理の改善が進む可能性がある。バイデン政権では、特定の申請者の面接免除や、未処理の申請が多い国への職員の移動、職員増員など一連の改善を実施してきた。

加えて、パスポート発行時間も短縮も期待される。国務省はパスポート処理時間を2021年の18週間から2023年12月には6~8週間に短縮。2023年度には過去最高の2400万枚のパスポートが発行された。国務省は6つの新しいパスポート代理店を設立し、パスポート発行所を35ヶ所に増やす計画だ。

ハリス氏は、バイデン政権の外交政策を引き継ぐと見られることから、国際関係を重視し、二国間観光協定の増加や二国間の旅行の円滑化につながる可能性がある。

また、航空会社の自動払い戻しについてもバイデン政権の施策を引き継ぐだろう。運輸省は、新しいジャンク料金開示規則に加えて、フライトが大幅に遅延またはキャンセルされた場合、預け入れ手荷物が遅れた場合、または支払われた付随サービスが提供されなかった場合に、航空会社が自動的に現金払い戻しをおこなうという法案を可決。10月に発効する見込みだ。

このほか、気候変動対策についても引き続き重視するだろう。2021年、バイデン政権は、トランプ政権が2017年に協定から離脱した後、パリ気候協定に再加入。これにより、米国は温室効果ガスの排出削減と、地球温暖化対策で他国と協力することを約束した。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(Skift)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Trump vs. Harris: What Each Administration Would Mean for the Travel Industry

著者:Sarah Kopit氏, Dawit Habtemariam氏, Meghna Maharishi氏


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