グーグルの「脱クッキー」撤回は朗報か? 旅行マーケティングへの影響と、撤回の背景を考察した【外電】

グーグル(Google)は、提供するブラウザChrome(クローム)上でサードパーティークッキー(cookie)の使用を2024年末までに段階的に停止する計画を撤回すると明らかにした。これまでサードパーティークッキーを利用してきた広告主を怒らせたくないためだ。

この撤回により、企業は引き続き他サイトでの消費者行動を追跡し、ターゲティングすることが可能になる。例えば、エクスペディアがアマゾンで買い物をする潜在顧客に、ヒルトンホテルがマリオットのサイトに訪問したことのある潜在顧客に宿泊割引を広告配信するというようなマーケティングだ。

アップルは、ブラウザsafari(サファリ)のユーザーにサードパーティークッキーをブロックするオプションを提供することで、追跡機能を制限している。Firefoxでも、ユーザーがどのように制限するかを選択することが可能だ。

アルファベットのサンダー・ピチャイCEOは、決算発表で、クッキーを完全に廃止することはないしたうえで、「サードパーティークッキーについては、エコシステム全体への影響や、多くのステークホルダーの考え、そのフィードバックを考慮すると、ユーザーが選択することが最善の道だろう」と話した。

一部の規制当局も、サードパーティークッキーを廃止すると、広告競争が制限される可能性があるとの見解を示している。

旅行マーケティングに与える影響は?

では、グーグルのクッキーに関する決定は、旅行マーケティング担当者にどのような影響を及ぼすのだろうか。

米観光産業ニュース「スキフト(skift)」調査部長のセス・ボルコ氏は、「小規模な旅行広告主にとっては、サードパーティークッキーの使用継続は、ありがたいはず」と話す。大企業はすでに、クッキー機能がなくなった場合に備えて、消費者を追跡するために自社データ(ファーストパーティーデータ)をより有効に活用する方法を開発している。ファーストパーティーデータは非常に有効で、AIモデルの作成やパーソナライズされたオファーなどデジタル体験を向上させることができるものだ。そのため、ボルコ氏は、大企業にとってグーグルの今回の決定は「現状を変えるものではない」と話す。

デジタルマーケティング代理店Fromの戦略担当副社長であるブライアン・ハーニマン氏は、今回の決定は、「Google Flights」や「Google Hotels」などグーグルのネイティブ広告が、「旅行広告主が撤退した場合、十分な収益を挙げられるほど成熟していなことを示すものかもしれない」と話す。

ベンチャー キャピタルのブルック・ベイ・キャピタル社の創設者ギラッド ベレンスタイン氏は、「業界のほとんどの企業は、クッキーのない未来に備えていない」ことから、今回のグーグルの決定は、旅行マーケティング担当者にとって朗報との見解だ。一方で、クッキー廃止には賛成の立場を示す。そうすれば、「企業は顧客を理解し、顧客にマーケティングするより良い方法を見つける努力を促すことになる」と述べた。

エレクトロニック・フロンティア・ファンデーションのレナ コーエン氏は、「グーグルの今回の決定は、同社の広告主導ビジネスモデルからすれば、当然の結果だ」と話す。グーグルの収益の約80%はオンライン広告から。同氏は「Chromeがユーザーのプライバシーよりも広告主の利益を優先しているのは明らかだ」と話した。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(Skift)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:In Major Reversal, Google Will Keep Cookie Trackers. What it Means for Travel Marketers

著者:Dennis Schaal氏


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