欧米で加速するデジタルID、パスポートや支払情報を個人情報としてモバイルに保存可能に、旅行者が主導権握る時代に起きること【外電】

近年、欧米では個人デジタルIDが加速している。例えば自己主権型アイデンティティ (self-sovereign identity:SSI)、検証可能な認証情報(verifiable credentials)、デジタルウォレットに関する取り組みのペースが挙げられる。これは、旅行や日常生活で根本的かつ急速な変化につながると言われている。

欧州では、2024年5月にデジタルID規則が施行され、すべての加盟国は2026年までにEUデジタルIDウォレットの少なくとも1つのバージョンを提供することが義務付けられた。米国では国土安全保障省が最近、デジタル認証情報の開発に向けて6つのスタートアップに資金の提供を始めた。

このデジタルIDによって、利用者が取引きで主導権を握ることが可能になる。旅行では、サプライヤーや代理店は、利用者の「承認」が必要になるため、より適切なオファーが必要になる。

バルセロナで開催された旅行テックの国際会議「フォーカスワイヤ・ヨーロッパ」では、デジタルIDを活用する旅行者の体験がどのようなものになるのか議論が展開された。

旅行者が主導権を握る未来、企業への信頼が重要に

EUデジタルアイデンティティ・ウォレット・コンソーシアムのアドバイザーであるアネット・スティーンバーゲン氏は「これは、オンライン取引のパラダイムシフトになる」と話す。「旅行者が主導権を握ることになる。デジタルIDでは、利用者は共有するデータに対して責任を負うことになるため、企業との信頼がより重要になる。企業とつながる方法も変わってくる」と続けた。

欧州では、住民向けのデジタルIDウォレットが現実のものとなると、旅行者はパスポートなどの書類、支払い認証情報、旅行の好みなどを個人情報としてモバイルデバイスに保存できるようになる。

アマデウスのトラベラーIDソリューションのマネージング ディレクターであるフランソワ・ブラン氏は、「旅行サプライヤーと仲介業者がこれらのデジタル認証情報をどのように扱うか (独自のウォレットを作成するか、あるいは他のウォレットと統合するか)、旅行者との直接つながる中で、どのような種類のオファーや体験を提供できるか、それを決めなければならない」と話す。

さらに、ブラン氏は「デジタルIDは、未来のCookieだと言う人が多くいる。しかも、敬意を持ってそう言っているのだ。なぜなら、旅行者と旅行業者が共に利益を得ることに合意することになるからだ。旅行者が望むなら、事業者は、旅行中に今以上に真摯に旅行者を追跡する必要がある」と話す。

デジタルIDとコネクテッドトラベルのインフラ構築しているスタートアップNeoke創設者兼CEOのビカス・バホール氏は、「ユーザー側がサプライヤーやエージェントとデータを共有するタイミングや方法を制御できるようになる」と、パーソナライゼーションと自動化の意味は今日と全く異なるものになるとの見解を示す。

また、バホール氏は「消費者は、デジタルIDがもたらすメリットを理解すれば、すぐに受け入れるだろう。課題は、デジタルIDを大規模に展開して、旅行者の体験全体での相互運用性を実現することだ」と続けた。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:HOW VERIFIABLE CREDENTIALS AND DIGITAL WALLETS WILL TRANSFORM TRAVEL


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