データで読む日本のオンライン旅行市場、取扱いシェアの変化からサプライヤー直販比率まで -フォーカスライトJapan

拡大の一途をたどるオンライン旅行市場。フォーカスライトJapan(PCWJ)代表の牛場春夫氏は、先ごろ同社が発行した「日本のオンライン旅行市場調査 第2版」の解説とともに、市場展望を語った。

牛場氏は2014年3から5月に調査した2013年度の調査結果から、日本のオンライン旅行市場における注目すべき3つの動きを指摘している。各事業会社のオンライン旅行販売が増加しながらも、シェア構成に変化が起きていることや、サプライヤー(航空、宿泊など)のオンライン販売の伸びに注目したい。また、さらに細分化された業態による違いも明らかになった。

この調査は、オンライン旅行の市場規模と、本邦サプライヤー、旅行会社(中間業者)のオンライン販売の状態や特徴を見出すことを目的に2年に1度、フォーカスライトJapanが独自調査として、旅行会社への聞き取り調査を中心に実施しているもの。オンライン販売の定義を予約から決済までのプロセスがオンラインで完結するもの、決済はオフライン(コンビニ、銀行振り込みなど)であるものの予約がオンラインで行なわれるものとしている。

牛場氏が指摘した3つの動きは以下のとおり。


1.大手OTAのシェア縮小

牛場氏が2013年度の旅行会社のオンライン販売で「最大の特徴」というのが、”和製”の2大OTA、楽天トラベル、リクルート(じゃらん)のシェア縮小だ。

旅行会社全体のオンライン販売額は1兆5699億円で、2011年度の9895億円の約6割増となった(国内旅行と海外旅行の合計)。楽天トラベルとリクルートの各販売額も24.4%増の3644億円(フォーカスライトでは両社同一と推定)と大きく増加しており、引き続き市場を牽引している。しかし、両社の全体に占めるシェアは60%から46%となり、半分を切ったのだ。

一方、i.JTBの販売額は51%増(1613億円)、その他の旅行会社は2.4倍(計6375億円)で、2大OTAを上回る伸びとなっている。※「その他の旅行会社」には、楽天トラベル、リクルート、一休、i.JTB以外の旅行会社全般(日本に拠点を置く海外OTA含む)。

牛場氏はその背景として、後れをとっていた(1)従来型旅行会社(Traditional Travel Agent:TTA)がオンライン販売を強化し、猛追している動きに加え、(2)ダイナミックパッケージの増加、さらに、エクスペディアやアゴダ、ブッキングドットコムなど“御三家”を中心とする(3)海外OTAの躍進、の3つの要素を説明する。

特にダイナミックパッケージに関しては、「相当強化された」とこの2年間の変化を強調。以前は一部の旅行会社に限られていたが、「安い航空券を購入したら、安い宿泊を手配したい」ニーズが当然ある中、航空会社がダイナミックパッケージ用の販売を強化し、中小の旅行会社での扱いも増えた。「ネットに慣れて賢くなった消費者にはそれぞれ単品で選べる方が好まれる」と、市場での定着を指摘する。


2.サプライヤーのオンライン販売が拡大

IMG_0568日本の宿泊旅行市場(航空:内際合計、新幹線、レンタカー、高速乗合バス、宿泊施設、いずれも日本法人)に占めるオンライン販売比率は33%となり、前回調査よりも3ポイントの拡大となった。

総販売額は前回調査より12.4%増の8兆7261億円。これに対し、オンライン販売額は24.0%増の2兆8933億円。サプライヤー別に見ても、いずれも2ケタ増となっており、「成長軌道に乗っている」とする。今後も拡大傾向は続き、牛場氏は次回調査(2015年度)には4割に達すると予測している。

オンライン比率トップの航空会社は、2013年度には46%となって5ポイント拡大(オンライン販売額は25.4%増の1兆244億円)。全体のオンライン旅行市場におけるシェアは10ポイント増の35%と加速し、販売額でトップの宿泊施設(27.9%増の1兆1816億円、シェア41%)に迫る勢い。

一方の宿泊施設のオンライン販売比率は3ポイント増の32%となった。宿泊施設は業態によって大きく異なり、ビジネスホテルが60%(比率3ポイント増)と突出している。その他のリゾートホテル、シティーホテルなどはいずれも3割以下で停滞しており、総販売額が2番目に多い旅館のオンライン販売比率は18%(1653億円)と2割に満たない。宿泊施設のオンライン販売動向を見るには業態まで細かく確認する必要がある。

ちなみに、総販売額でもビジネスホテルがこの2年で25.2%増の9790億円となり、旅館(3.1%増の9183億円)を抜いてトップになった。牽引したのはオンライン販売で31.8%増の5874億円と3割増となっている。一方、オンライン販売比率が低い旅館だが、それでも2年前に比べて販売額は26.2%増の1653億円に増加。オンライン販売以外の販売額は0.9%減の7530億円で、わずかだが2年前を下回っている。

このほか、高速バス(オンライン販売額:11.6%増の2352億円、比率39%)、レンタカー(オンライン販売額:76.2%増の444億円、比率18%)もオンライン販売比率が高まっている。特に牛場氏は高速乗合バスを「陸のLCC」とし、さらなるオンライン販売の拡大が期待できる分野だと注目を促す。


・オンライン販売における直販比率は低下

拡大するサプライヤーのオンライン販売だが、旅行会社を含むオンライン旅行市場(国内サプライヤー販売分のみ)での直販比率は60%(1兆7398億円)で、前回調査より2ポイント低下した。比率の高い順に、新幹線(94%)、航空(82%)、高速乗合バス(80%)、レンタカー(70%)だが、このうち、直販額が最も高い航空(8441億円)の直販比率は前回調査よりも1ポイント低下した。

これについて牛場氏は、航空会社のダイナミックパッケージ強化に加え、LCC利用のパッケージツアー商品の増加を指摘。旅行会社に依存し始めている動きの影響だと説明する。

航空会社と同様に、宿泊施設(2930億円)もオンライン販売での直販比率が25%と1ポイント下げた。宿泊施設の場合は施設件数が多く、施設の規模やシステム開発能力の差が大きいため、販売を旅行会社に依存し、他分野と比べてオンライン化が進まないのが理由。これは日本だけでなく、世界的にも同様の傾向で欧州も29%にとどまる。ただし、世界5大ホテルチェーンを有するアメリカは53%と直販が半数を占めている。

なお、オンライン直販比率を世界と比較すると、意外なデータがある。オンライン販売比率は米国が43%、欧州が42%と進んでおり、オンライン直販比率も米国が65%、欧州が61%と高い。ただし、航空の直販比率だけを見ると米国は74%、欧州とAPACは73%で、日本(82%)が上回る。


3.モバイル化の影響

最後に牛場氏は「モバイルの影響」も指摘した。今回の調査ではモバイル販売のデータは入っていないが、企業への聞き取り調査を踏まえ「2014年は2割ぐらい」の印象があるという。モバイルの販売比率3割を目指す企業が多いなか、今後は飛躍的に上がり、早ければ2015年度に3割に到達すると展望。現に、楽天では物販含む楽天市場全体のモバイル化率が44%(2014年第3四半期)に達しており、トラベル事業でも3割程度に達しているのではと見る。

モバイルの進捗は業種のみならず企業によっても異なるが、例えば新幹線や高速乗合バスでは5割に達している可能性があるという。利用者は新幹線などの利用が多いビジネス客のみならず、高速乗合バスの利用の多い女性客も中心となっているようだ。

※オンライン旅行市場の今後の展望については後日掲載

>>参考記事

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