昨年から今年、宿泊施設に対する手数料の無料化で話題を集めたYahoo!トラベル。2月には大幅なサイトリニューアルを行ったほか、予約システム大手のダイナテック社の買収、旅行の比較横断検索(メタサーチ)「スカイスキャナー」との合弁会社設立、レジャー体験サイト「アソビュー」との連携強化など次々と新しい動きを見せている。
「OTAに近いメタサーチとして事業を拡大していく」と話すトラベルサービスマネージャーの西田裕志氏にその狙いを聞いてみた。
ダイナテック買収の狙いは? ―都市部ホテルの在庫確保が最大の狙い
Yahoo! Japanは今年7月、国内のホテルや旅館に予約管理システムを提供しているダイナテック社を買収。これにより、このシステムを利用して自社ホームページで予約管理を行っている宿泊施設は、Yahoo!トラベルへの掲載も簡単に行えるようになった。
ダイナテック社を買収したからといって、宿泊施設の掲載が自動的に行われるのではなく、宿泊施設側の希望が基本だ。「当初から方向性は変わっていない」と西田氏。インバウンド市場が急速に拡大していくなか、ユーザー利用を増やしていくための在庫確保がこの買収の狙いと明かし、「特に都市部の在庫確保が課題。とにかく予約できない状態を回避したい」と話す。
ダイナテック社が現在契約している国内の宿泊施設は約2000軒。そのシェアは圧倒的なことから、この買収による自前コンテンツの充実への期待は大きい。
ダイナテック社のサービスを利用する宿泊施設がホームページで提示する価格とYahoo!トラベルでの価格は同じになる。しかし、Yahoo!IDで予約をするとTポイントが付与され、さらに約1000万人いるプレミアム会員にはプラス5%の特典がある。Yahoo!トラベルでは、このTポイント戦略を重視しており、「ユーザーにとっては、お得感がある」と西田氏はそのメリットを強調する。
ダイナテック社との具体的な連携は現在、設計が終了し、業務フローの整理に入っているところ。近いうちに稼働する見込みだ。「今後も在庫と価格については動いていく」と西田氏。Yahoo! Japanという巨大検索エンジンをもとに、「OTAに近いメタサーチとして」の存在感をさらに強めていく方針だ。
「スカイスキャナー・ジャパン」設立の目的は? -ヤフーの検索最適化が狙い
同じく7月には、Yahoo! Japanとイギリスの「スカイスキャナー」は、合弁会社「スカイスキャナー・ジャパン」を設立した。スカイスキャナーは旅行比較サイトだが、この連携はYahoo!トラベルではなく、Yahoo! Japanの検索チームが主導して行われたのだという。連携の一義的な目的は検索の最適化で、Yahoo! Japanで出発地、目的地、航空券といったワードを検索するとスカイスキャナーの航空券検索結果が表示されるようなることを狙った。
Yahoo!トラベルとしては、「ホテルの分野での連携を計画しているところ(西田氏)」だという。
こうした宿泊施設以外へのアプローチは、レジャー体験サイト「アソビュー」との連携強化にも見られるところだ。今年8月からは、Yahoo!トラベル内でアソビューの各種プランを直接検索できるようにした。
検索後、実際の予約手続きはアソビューサイトに遷移して行うことになっている。今後もその方法を継続していく方針で、Yahoo!トラベルとして事業者と契約したり、予約できる仕組みは考えていないという。
「ボリュームの大きいホテルは自前で展開し、そのほかの分野についてはパートナーとの協力で進めていきたい」と西田氏。Yahoo! トラベルとしては、ホテル予約のついでに他の旅行素材を提案していく取り組みを強化していきたい考えのようだ。
「将来的には国内ダイナミックパッケージも視野に入れている」と西田氏は明かす。また、ホテル予約後の裾野を広げる意味で、地図などへの展開にも関心を示すなど、「可能性のあることはすべて検討していく」方針だ。
リニューアルの評判は? ―「予約が驚くほど伸びた」
Yahoo!トラベルのサイトは今年2月に大幅リニューアルされた。提携サイトから提供される旅行商品だけなく、Yahoo!と宿泊施設の直接契約で掲載をする独自商品「Yahoo!トラベルプラン」の取扱いを開始。デザイン面ではスマートフォンでの利用しやすさや国内旅行予約の導線を意識したものとなった。西田氏は、リニューアル後の反響について、具体的な数字の言及は避けたものの、「予約数は驚くほど伸びた」と明かす。また、「実際の予約につながったコンバーション率やリピート率も上がった」との手応えも示す。
また、キャンペーン効果によって新規予約も増加。特に一人予約が増えており、西田氏は「おそらくビジネスユーザーが増えているのではないか」と分析する。
Yahoo! Japanでは、eコマース革命の後の施策として予約革命を進めており、今回のリニューアルもその流れの一貫と位置づけている。PCサイトに加えて、スマートフォン・アプリのリニューアルも進行中。今年10月〜11月までの間にリリースする予定だ。
聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫
記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹