福岡県はこのほど、熊本地震による各国での訪日観光への影響と今後の対応をとりまとめた。各国にある事務所が中心となり、現地旅行会社へのヒアリングなどを交えて整理したもの。
中国は「早期収束の見通し」
中国では、地震直後に政府外交部が熊本への渡航自粛や九州地区への注意喚起を発出したが、その通知期間は5月16日までとなっている。現地旅行会社へのヒアリングによれば、「九州旅行を敬遠する動きはあったが、他国へ振り替えるのではなく、日本の別の地域へ振り替えるという動きが見られた」とする声が多く聞かれたという。
今後の対応としては、九州の各自治体が一致団結して、上海近郊で九州物産展や観光PRを行う企画「九州マンス」を展開。これらの状況を受け、「予断を許さないものの、中国人観光客への影響は早期に収束する見通し」としている。
米国は「個人旅行者に向けた正しい情報の発信が必要」
米国での旅行会社へのヒアリングでは、福岡を訪問する旅行者について「空港が閉鎖されない限り影響はない」「熊本地震直後に目立ったキャンセルなどはなかった」「今後の予約についても昨年と遜色のない状況」といったコメントが寄せられたとする。
その反面、現地の個人数名にインタビューした回答では、「現地の状況が把握できないため九州地方への旅行は避ける」「余震が続いているのであれば九州以外のところで計画を立てる」「被害状況ばかりが報道されているため敢えて九州を選ぶことはしない」といったコメントも寄せられたという。
これらのことから、風評の影響で福岡も旅行先から除外される恐れがあると分析。米国で多くの個人旅行者が参考にするネット上のクチコミ情報を通じ、正しい状況を効果的に発信していく必要性があるとしている。
香港は「影響は軽微」、そのほか国の状況に応じた対応で早期回復に期待
これら以外の地域でも、各国事務所が中心となり、ASEANや香港などに関する同様のレポートをとりまとめた。その結果、例えば「九州」をそもそも認知していないインドネシアや、地震がほとんど発生しないシンガポール、マレーシアなど、国に応じた対応が望まれることが判明している。また、香港では、震災後も現地の取材情報を積極的に発信したことが功を奏したほか、ツアー催行数も回復の見通しであり、全体的に影響は軽微だったとする。
なお、日本政府観光局(JNTO)による発表によれば、4月は韓国市場で熊本地震の影響で運休や減便の措置が取られたため大幅減となったが、6月以降は順次復便の見通し。台湾は、九州ツアーの伸び悩みはみられたものの、国内複数の別ルートを対象とするツアーが造成。全体的には堅調に推移したという。