政府、観光インフラ整備など28.1兆円規模の新経済対策、震災復興・地方創生・サイバーセキュリティ対策や中小企業支援も

政府は2016年8月2日、事業規模28兆1000円の「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定した。アベノミクスを一層加速させるため、金融政策、財政政策、構造改革を総動員し、当面の需要喚起のみならず、持続的な経済成長と一億総活躍社会の実現に繋がる施策を中心に設定したもの。実質GDP(需要)の1.3%程度の押し上げ効果を見込む。

このなかで観光分野では「外国人観光客4000万人時代に向けたインフラ整備」として、大型客船受入れのための港湾整備や空港の機能強化、観光情報・交流施設の整備などのハード面と、容積率の緩和による旅館・ホテルの建設促進、訪日外国人の決済環境整備などのソフト面の両面で推進。2020年の訪日4000万人、2030年の6000万人の達成に向けて計画的に進めるため、年内をめどに「観光インフラ整備プログラム」(仮称)の策定も予定する。

このほか、地方創生の推進では、空家の滞在型体験施設や交流・展示施設への改修などの支援や、国家戦略特区の活用も推進。震災復興では、東北地方へのインバウンド推進による観光復興事業や、民間主導による「東北観光ファンド」(仮称)の創設などで、地方創生のモデルとなるような復興の実現を目指す。

また、安全・安心の確保では、テロ情報等の収集能力・海外安全情報の発信などの強化やサイバーセキュリティの強化、東京オリンピックを見据えた重要サービス提供者との共同対処体制の構築などを推進。このほか、生産性向上を図るため国内の中小企業・小規模事業者に対する資金繰りや経営力強化などの支援を拡充するなど、中小事業者の多い旅行・観光業界にも恩恵のある取り組みも計画された。

今回示された各項目の主な具体的措置のうち、観光分野に関わりそうなものを以下に抜粋した。

【未来への投資を実現する経済対策 各項目の事業規模と主な具体的措置】

※観光に絞って編集部で抜粋

Ⅰ.一億総活躍社会の実現の加速(事業規模:3.5兆円程度)

Ⅱ.21世紀型のインフラ整備(事業規模:10.7兆円程度)

(1)外国人観光客4000万人時代に向けたインフラ整備

・大型クルーズ船の受入環境改善(国土交通省)

・羽田空港等の機能強化(国土交通省)
・訪日外国人旅行者受入基盤整備・加速化事業(国土交通省)
・クレジット取引におけるセキュリティ対策推進事業(経済産業省)
・地方誘客のための緊急訪日プロモーション(国土交通省)
・国立公園満喫プロジェクト等推進事業(環境省)
・医療機関における外国人患者受入環境整備事業(厚生労働省)
・良好な水辺空間の形成による観光地の魅力向上(国土交通省)
・景観等の観光資源を活かしたまちづくりの推進(国土交通省)
・旅館・ホテルの建設の促進(容積率の緩和)(国土交通省)
・国営公園等のインバウンド対応、国際イベント対応の競技場改修(国土交通省)
・魅力ある公的施設の大胆な公開・開放(内閣府)
・観光立国に資する文化財等修理・整備(文部科学省)
・クールジャパン拠点間の連携による効果の実証(内閣府)
・2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等に向けた施設整備(文部科学省)

(3)リニア中央新幹線や整備新幹線等の整備加速

・リニア中央新幹線、整備新幹線、高規格幹線道路等の広域的な高速交通ネットワークの整備・活用(ETC2.0の利用者に対する高速道路料金の大口・多頻度割引等を含む)(国土交通省)

・羽田空港等の機能強化(国土交通省)【再掲】


Ⅲ.英国のEU離脱に伴う不安定性などのリスクへの対応並びに中小企業・小規模事業者及び地方の支援(事業規模:10.9兆円規模)

(1)中小企業・小規模事業者向けの資金繰り支援

・日本政策金融公庫等による中小企業・小規模事業者の資金繰り支援、海外展開支援(財務省、厚生労働省、経済産業省)

(2)中小企業・小規模事業者の経営力強化・生産性向上支援

・最低賃金の引上げに向けた中小企業・小規模事業者の経営力強化・生産性向上支援事業(厚生労働省)

・下請法の運用基準における違反事例の充実を始めとする関連法規の運用強化(公正取引委員会、経済産業省、事業所管省庁)

(3)地方創生の推進

・未来への投資に向けた地方創生推進交付金(内閣府)

・地方創生カレッジ等を通じた人材育成・確保(内閣府)
・地域における付加価値の高い産業の創業(内閣府)
・軽井沢スキーバス事故を踏まえた安全対策(国土交通省)


Ⅳ.熊本地震や東日本大震災からの復興や安全・安心、防災対応の強化(事業規模:3.0兆円程度)

(2)東日本大震災からの復興の加速化

・東北地方へのインバウンド推進による観光復興事業(国土交通省)

・民間主導による「東北観光ファンド」(仮称)の創設(復興庁、国土交通省)

(4)安全・安心の確保

・国際テロ情報等の収集能力、海外安全情報の発信等の強化(内閣官房、外務省、法務省)

・サイバーセキュリティの強化(総務省)
・産業系サイバーセキュリティ推進事業(経済産業省)
・サイバーセキュリティ対策保険の中小零細企業による利用等の促進(経済産業省)
・2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えた重要サービス提供者等との共同対処体制の構築(内閣官房)
・日本の魅力発信のための日本博の実施(外務省)


 

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