PwCコンサルティングはこのほど、「ホテルブランドが顧客ロイヤルティを高める要因」をテーマとする調査レポートを発表した。会員ポイントや価格割引、サービス特典など、ホテルが提供するロイヤルティプログラムについて、利用者の属性や宿泊用途別に志向を分析したもの。その結果、ビジネス客はレジャー客と比較すると「自分に合ったサービス特典」を重視する傾向が強いことが判明した。
ロイヤルティプログラムを選ぶ際に最も重視する点は、ビジネス客・レジャー客ともに、「ポイントの価値」(ビジネス客54%、レジャー客46%)と「値頃感」(ビジネス客41%、レジャー客38%)。ただし、3番目に続く項目は宿泊用途によって異なり、ビジネス客が「自分にあったサービス」(ビジネス客40%、レジャー客27%)、レジャー客では「クレジットカードや航空会社などほかのプログラムとの連携」(ビジネス客33%、レジャー客31%)だった。
これは、ビジネス客が出張費で宿泊料金を賄える一方、レジャー客は自分のお金で宿泊することに起因する違いとみられ、レジャー客のほうがより直接的に「価格」に敏感であることを示めしている。
旅行者が特定のプログラムを選択する動機は以下のとおり。
また、蓄積した会員ポイントを利用する頻度や用途の傾向も顧客属性で異なる。ビジネス客は70%が「年に1度以上ポイントを交換している」一方、レジャー客は約6割の58%が「過去一年間に交換していない」と回答。
ポイントで交換したい特典では、ビジネス客・レジャー客の約8割が「無料宿泊券」を選択。続く2番目は、ビジネス客が「客室アップグレード」(ビジネス客21%、レジャー客12%)、レジャー客が「航空マイル」(レジャー客19%、ビジネス客13%)。同レポートではこれら結果について、ポイントの利用頻度や目的は、旅行回数(ポイントのたまり具合)に大きく関連があるとみている。
ビジネス客とレジャー客が好む特典の集計結果は以下のとおり。
なお、宿泊先としての民泊(シェアリングエコノミー)の利用状況をについて調査したところ、利用経験があるレジャー客は24%、ビジネス客では16%に留まった。その理由として、ビジネス客の約3分の1が「企業側が従来型と異なる宿泊施設(シェアリングエコノミー)の利用禁止としている」と回答。盗難などの損害賠償、人身損害、物的損害などへの懸念があることがあげられた。また、自由に宿泊場所を決定できるレジャー客についても、宿泊品質と安全を懸念する声が多くあがったが、20代の若い世代 だけは例外で、「リスクのある民泊体験」を積極的に活用する傾向だったという。
同レポートでは今回の調査結果を受け、「ホテル企業は全客層を対象にプログラムをデザインするのか、より収益性の高い客層に焦点を当てるのかのいずれかを判断する必要がある」と分析。ホテルのロイヤルティプログラムに精通する会員は、自分が求めるサービスを獲得する方法をしっかり理解し、「サードパーティサイトで調べたうえで、ホテルに直接予約を入れる」傾向にも触れ、最適なロイヤルティプログラムの提供は、ホテルと顧客の利益とエンゲージメントを高めるとしている。
今回の調査は、年間宿泊数10泊以上のビジネス客と同5泊以上のレジャー客の合計1026名を対象に実施したもの。