スポーツ庁、文化庁、観光庁は、3庁が今春に締結した包括的連携協定をふまえた初のプロジェクト「ジャパン・トラベル・マンス」を、9月21日から10月22日までの一カ月間、開催する。期間中、日本観光振興協会(日観振)、日本旅行業協会(JATA)、日本政府観光局(JNTO)が開催する「ツーリズムEXPOジャパン2016」をはじめ、インバウンド旅行誘致や国内観光の活性化を図るイベントを実施。また全国各地の祭りや伝統行事など、「日本の秋」の文化・スポーツ情報を、総合的にウェブサイトで発信していく。
*写真は左から田川博巳JATA会長、松山JNTO理事長、宮田文化庁長官、田村観光庁長官、仙台スポーツ庁参事官、山口・日観振会長
こうした活動で、海外向けに「ジャパン」ブランドの価値向上を狙うと同時に、国内向けにも、まだあまり知られていないお祭りや食、伝統芸能など、各地域の魅力の再発見を促したい考え。同イベントの発表記者会見で、田川博己JATA会長は「スポーツ、文化、観光関連のコンテンツを“旅”の力で世界に発信する試み。観光は裾野が広い産業なので、他の省庁との連携を深めていきたい。また地方にも効果を波及する方法を考えたい」と話した。
3庁の包括的連携協定では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックはもちろん、それ以降も見据え「観光先進国、世界に真に開かれた国を目指す」(田村明比古・国土交通省観光庁長官)とのビジョンを掲げている。田村長官は、目標達成のために「人を動かす力を持っているスポーツや文化は、有力かつ不可欠なコンテンツ。今回のプロジェクトはまだ第一弾であり、今後、さらに進化した姿へと盛り上げていきたい」と話した。幕開けはツーリズムEXPO、今年のフォーラムは「スポーツ&MICE」にフォーカス
ジャパン・トラベル・マンスの幕開けとなるイベントは、今年で開催3年目となる「ツーリズムEXPOジャパン2016」(9月22~25日)。初日に日本橋で開催するジャパン・ナイトでは、日光東照宮の技を受け継ぐ彫刻屋台が登場、鹿沼(栃木県)の秋祭りなどを紹介する。東京ビッグサイトで開催するフォーラムでは「スポーツ&MICE」をテーマに各地の事例を取り上げる。
また展示場では、障がい者と健常者が一緒に楽しめる種目などを紹介した「パラスポーツパーク」や、日本各地のスキー・リゾートが集まったブースが参加予定。4日間の目標参加者数は、昨年実績を越える18万5000人(昨年は17万3000人)としている。日観振の山口範雄会長は「今年は過去最多、1585コマのブースが出展予定。食、伝統芸能、ものづくり、翻訳アプリなどのテクノロジー関連まで多岐に渡る」と話した。
観光業界での優れた取り組みを表彰する「ジャパン・ツーリズム・アワード」には158件の応募があり、大賞は飛騨高山国際誘客協議会に決定した。インバウンド誘致への先駆的な取り組みであり、息が長く、地道な活動などが評価された。
ビジット・ジャパン・トラベル&MICEマーケット
JNTOがツーリズムEXPOと同時開催する「ビジット・ジャパン・トラベル&MICEマート2016(VJTM)」(9月21~23日)では、今回、インバウンド旅行者の地方誘客、観光による東北・九州の復興支援、欧米豪市場からのバイヤー誘致の3点に力を入れる。同マート開催後のファム・トリップでは、計10コースのうち、3コースを東北、2コースを九州に設定した。海外バイヤーは30か国から約380人が参加予定で、このうち約47%が欧米豪の各国からとなる。松山良一JNTO理事長は「日本へのインバウンド誘致4000万人、消費額8兆円という新たな目標に向けて舵を切ったところだ」と意気込みを示した。
スポーツ・文化のフォーラムを初開催、東京・京都の2都市で
ジャパン・トラベル・マンスの締めくくりとなる「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」(10月19~20日)は京都と東京の2都市で開催。仙台光仁・文部科学省スポーツ庁参事官は「昨年10月に発足したスポーツ庁にとって、ちょうど一周年の時期。スポーツを通じた健康増進や地域経済の活性化にとりくむための足かがりとなるイベントであり、日本中をスポーツで盛り上げていきたい」と鈴木大地長官のメッセージを紹介した。
文部科学省文化庁の宮田亮平長官は「日本の文化は多岐にわたり、また奥深いが、そのアピールが苦手。3庁の連携、官民の協力により、もっと日本文化の魅力を伝えられれば大成功につながる。2020年の東京五輪は日本にとって最高のチャンスであり、今は動き出すのに絶好のタイミングだ」と話した。
海外が先行する国立博物館などユニークベニューの活用については「ちょうど9月から国立美術館・博物館の夜間開館時間などを拡大したところ。夜、仏像の前でのヨガ体験(東京国立博物館)など、新しい試みも始めている。ただ、こうした情報の発信がまだ不十分だと感じている。わくわくする体験をもっと提供していきたい」と意欲を示した。
取材・記事 谷山明子