野村総合研究所がこのほど実施した調査によると、日本の純金融資産保有額が1億円以上の富裕層は推定121.7万世帯、純金融資産総額は272兆円に至ることが分かった。そのうち、保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」世帯は114.4万世帯(総額197兆円)、同5億円以上の「超富裕層」は7.3万世帯(総額75兆円)となっている。
富裕層世帯数の推移をみると、2013年から2015年までの2年間で富裕層の保有資産総額が17.3%増加、超富裕層は2.7%増加。合計で12.9%増えた。同社ではこの理由について、2013年から2015年にかけての株価上昇により、もともとの富裕層・超富裕層の資産が拡大。さらに金融資産を運用する「準富裕層」(保有額5000万円以上1億円未満)が富裕層に移行したとためと分析。一方で、2016年は円高や株価低迷などの影響で、富裕層・超富裕層の純金融資産額の増加には停滞がみられるとしている。
なお、富裕層・超富裕層に属する企業オーナー経営者へのアンケートによれば、全体の43%が資産の生前贈与をおこなった経験があり、さらに「生前贈与に関心がある」割合を合計すると76%に達したという。これは相続税課税強化の動きに伴うものとされ、全体の47%が「できるだけ早く生前贈与を進めたい」と回答(「そう思う」もしくは「どちらかといえばそう思う」の合計)。さらに約3割が「自分の財産の大半を贈与することに抵抗がない」と回答(「そう思う」もしくは「どちらかといえばそう思う」の合計)したという。
同社ではこれらの結果を受け、富裕層・超富裕層が保有する資産が相続の時期を待たずに次世代に引き継がれ、消費・資産運用といった経済活動の活発化につながることが期待できると考察している。
※純金融資産保有額とは、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの合計から負債を差し引いた額のこと。
純金融資産保有額の世帯数と資産規模は、同社が各種統計等から推計したもの。アンケート調査の対象は、帝国データバンクによる全国の企業オーナー2万社。有効回答2146名のうち、本人と配偶者の保有する金融資産が1億円以上の354名を集計対象にした。調査期間は2016年8月~9月。