近畿日本ツーリストやクラブツーリズムなどを傘下に置くKNT-CTホールディングスは、2017年3月期(2016年4月1日~2017年3月31日)の連結業績を発表した。
売上高は3960億400万円で営業利益は29億6800万円、経常利益は30億4500万円と黒字を確保したが、当期純利益は13億2900万円の赤字となった。
KNT-CTは2016年3月期が決算期の変更により3か月決算となったため、2017年3月期は対前期増減率を発表していない。ただし、2017年4月27日に、売上高は前回予想の4040億円から80億円減の下方修正を発表。海外のテロや熊本地震などの外的要因に加え、OTAや民泊の拡大といった国内環境の変化により、特に個人旅行が低調に推移したのが要因で、業績結果については「厳しい結果になった」と説明する。
これに伴い、個人旅行事業のソフトウェア等の減損損失として38億4500万円を特別損失に計上したことで、純利益が赤字となった。事業別の結果は最下部に記載。
10月から分社化スタート
来期(2017年4月1日~2018年3月31日)の連結業績予想については、売上高が前年比4.3%増の4130億円、営業利益は14.5%増の34億円、経常利益は18.2%増の36億円、当期純利益は17億円の黒字を見込む。
増収増益の予想について、代表取締社長の戸川和良氏は「いろいろな要因で落ち込んだ部分の反動。特別損失の計上分も後押しになる」と説明。実際、足元(2017年4月~6月)の数字でも、海外旅行では欧州・ハワイが25~30%増で推移しているほか、国内ではOTAの影響を受けつつも5%増の月もあるといい、上向き基調にある。
また、2016年度の落ち込んだ要因である個人旅行の不振やOTAへの対抗策については、「それこそが構造改革の大きな要素」と述べ、2017年10月1日から2段階で行なう組織再編に自信を見せる。
KNTでは構造改革で、5つの地域旅行会社と2つの専門会社の分社化を予定。このなかで2018年4月1日にはネット専門会社を立ち上げるが、戸川氏は「OTAにOTAだけで対抗できるものではない。ヒューマンタッチの部分に力を入れる」と、地域密着型商品やレコメンド型商品を特に強化していく考えを示す。
各地域からも観光での活性化が望まれているとし、「地域と協働して活路を見出す」と地域密着型を重視する姿勢を表明。「弊社の強みはKNTで培ってきた提案力とクラブツーリズムの動員力。提案力は他社にもそれぞれに強みがあるが、実際に送客するビジネスモデルでは現在、クラブツーリズムが最強だと自負している」と自信を見せた。
構造改革で実施する分社化の予定は最下部に記載。
【2017年3月期、事業別業績結果】
- 個人旅行事業
- 売上高:2201億8600万円、セグメント利益:6億9400万円
- 団体旅行事業
- 売上高:1007億9300万円、セグメント利益:8億7500万円
- その他
- 売上高:859億1400万円、セグメント利益:9億2900万円
その他には海外航空券卸販売、北海道・東北・中国四国・九州地区の各種旅行商品の販売、人材派遣業や旅行関連サービス業などを含む
- 売上高:859億1400万円、セグメント利益:9億2900万円
【構造改革で行なう会社分割の概要】
近畿日本ツーリストと近畿日本ツーリスト個人旅行を分割会社とし、5つの地域旅行会社と2つの専門会社を承継会社とする。
2017年10月1日に実施する会社分割の承継会社
- 株式会社近畿日本ツーリスト中部(KNT中部)
- 株式会社近畿日本ツーリスト関西(KNT関西)
- 株式会社KNT-CT訪日旅行
※3社とも、会社名は仮称。資本金・資本準備金は各1億円、設立年月日(予定)は2017年6月1日、いずれもKNT-CTホールディングス100%子会社
2018年4月1日に実施する会社分割と事業内容
- 株式会社近畿日本ツーリスト首都圏/事業内容:東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県と静岡県の一部における旅行事業
- 株式会社近畿日本ツーリスト関東/茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、山梨県、長野県における旅行事業
- 株式会社近畿日本ツーリストECC/東京地区の法人を対象とするMICE中心の旅行事業など
- 株式会社近畿日本ツーリストWEB/インターネットを通じたグループ各社の個人旅行の販売
※いずれも会社名は仮称。KNT-CTホールディングス100%子会社