今年のWIT Japan 2017では、「民泊: 可能性と障害(Private Accommodation: The Possibilities & Roadblocks)」をテーマにしたパネルディスカッションも行われた。折しも、同日には住宅宿泊業務法(民泊新法)が可決・成立。2018年1月から施行されることになった民泊の可能性について、代表的なプラットフォーマーAirbnb も登壇して議論を交わした。
【登壇者】
- Airbnb Japanホームシェアリング事業統括本部統括本部長 長田英知氏
- ベンチャーリパブリックCEO 柴田啓氏
- Squeeze代表取締役CEO 館林真一氏
日本市場での民泊の成長性は?
この議論では、Airbnb長田氏が同社にとって「アジアの中で日本は最大の市場」と明かす。今後もインバウンド旅行者は増加が見込まれるため「今後も非常に有望。日本のホストの質は高いので、利用者の満足度も高い」と話した。さらに、最近では日本人の国内旅行で民泊の利用が増えていることから、「そこにも事業拡大のチャンスがある」と展望する。
民泊管理サポートサービスを提供しているSqueezeの館林氏は企業の出張など法人需要について言及。「ホテルは割高のため、出張宿泊として民泊を利用する企業も出てくるだろう」との見通しを示した。
ベンチャーリパブリックの柴田氏は、高級民泊市場への参入を果たした一休を引き合いに、「ローカルOTAもどうやって民泊市場に参入できるか考えている。今後、競争は激しくなる」との見通しを示した。
また、同社が運営するメタサーチ「Tavel.jp」でAirbnbの物件も取り扱っているが、「まだトラフィックは少ないが、民泊新法の施行に合わせて、これから日本人の需要も増え始めるだろう」と期待感を表した。
民泊市場の実態は?
訪日外国人数の伸びと、国内宿泊者数の伸びにギャップが生まれている。観光庁らの示す数字を見れば明らかだ。2016年の訪日外国人者数は前年比21.8%増だったのに対し、延べ宿泊者数は同8%増にとどまっている。
柴田氏は、そのギャップを部分的に埋めているのは民泊として、「すでに一定のシェアを持っている」とした。また、京都や大阪では供給不足が続いていたが、昨年秋から冬にかけて需給ギャップも改善してきたことにも触れ、「それも民泊の供給が影響しているのではないか」との見解を示した。
2016年の訪日外国人者数は2400万人。Airbnbでは、日本国内で外国人の利用者が約370万人となっているとしており、単純な計算をするとその割合はすでに15%になっている。日本政府の目標4000万人に達した時、Airbnb利用者のシェアはどれくらいになっているのか?
その問いに対し、長田氏の答えは「25%ほど」。館林氏は「これまで以上に地方に行く外国人旅行者が増えると予想される。民泊利用者は全体の20%ほどになるのではないか」と答えた。
取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹