世界2大OTAプライスライン・グループの旅行比較検索サイトKAYAK (カヤック)が、日本市場に本格参入する。2017年4月1日には日本のカントリーマネージャーに山下雅弘氏が就任。2014年にオープンしていた日本語サイトのコンテンツを拡充、日本人利用者向けのユーザビリティーも改善した。アジア12市場でもユーザー数の伸び率が高いことから、日本でのサービス展開に本腰を入れる方針だ。
*写真:日本カントリー・マネージャーの山下雅弘氏(左)とシニアバイスプレジデントのデビー・スー氏(右)
このほど来日した同社シニア・バイス・プレジデントのデビー・スー氏は「日本の海外旅行市場は2016年以降回復を見せている。今後も継続的な増加が見込めることから今回の本格参入に至った」と説明。国内旅行市場よりも海外旅行市場を重視していく方針で、「日本人海外旅行者数が変わらなくても、デジタル先進国である日本でのモバイル予約は今後成長していくと見込んでおり、その点でも潜在性は高い」と期待感を示した。
また、山下氏は「日本に担当者がいない間でも、日本のユーザー数はオーガニックで伸びている(自然に増加している)ことから、本社サイドでも日本は有望な市場と判断した」と付け加えた。山下氏は、エクスペディア・グループのホテルズ・ドット・コムでマーケティングマネージャーを務めた経歴を持つ。
スー氏は日本市場について、「有望だが難しい市場」という認識を示し、その理由としてOTAなどを含め旅行関連のプレイヤーや日本発着国際線および日本国内線を運航する航空会社も多いことを挙げた。今後はデジタルマーケティングやブランディングへの投資を増やすほか、テクノロジーの分野では検索時間のスピード化と正確性を高めていく方針だ。
日本での認知度向上については、「アメリカでもそうであったように、口コミを重視していく」(スー氏)考え。
強みは旅行の横断的な検索、民泊にも注目
国内外のメタサーチが競合するなか、スー氏はカヤックの強みについて、「カヤックは、エア、ホテル、民泊、パッケージ、鉄道などさまざまな旅行素材を横断的に検索できる唯一のメタサーチ」と強調する。また、オフラインでも利用できる旅程管理ツール「Trips」、7日先の価格動向を予測する「Price Forecast」などの機能を挙げた。また、山下氏は「カヤックは単純な旅行比較サイトではない」とし、タビマエからタビナカでも使えるサービスと紹介した。
民泊については、すでに米国のサイトではHomeAwayの物件を扱っているが、「日本語サイトでもまもなく提供される」(山下氏)予定だという。
スー氏は住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行を控えた日本の民泊市場について「非常に重要な素材。今後注力していきたい」としている。また、民泊最大手のAirbnb物件の検索についてはまだ取り扱いはないが、「Airbnbと話はしている」ことを明かし、今後に含みを持たせた。
また、スー氏は世界2大OTAのひとつプライスライン・グループ傘下のメリットについて、「それぞれ独立した経営をしている」としながらも、「ヨーロッパを拠点とするブッキング・ドットコムがアジア市場で成果中心、データ中心のビジネスで急成長していることは非常に参考になる」とグループ内のシナジー効果を強調した。
インスタントブッキングにも注力、日本の検索1位はソウル
メタサーチとOTAとの垣根が低くなってきている昨今、直接予約をするダイレクトブッキング機能を備えるメタサーチも増えてきた。カヤックでは、他社に先駆けてこの機能を提供している。すでにグローバルに展開している機能で、日本では、まずはモバイルとアプリの機能改善を優先。スー氏は「その機能も充実してきたことから、今後はインスタントブッキングにも注力していきたい」考えを示した。
このほか、日本の海外旅行の傾向について、2017年にカヤックで検索された旅行先ランキングも公表。1位はソウルで前年比61%増。以下、台北(同69%増)、バンコク(同36%増)、ホノルル(同2%増)、香港(同75%増)となった。スー氏は「人気の旅行先の傾向はマーケットによって異なる。ただ、アジアでの共通点は近距離デスティネーションの人気が高いこと」と分析する。また、日本人のアジア地域への旅行の平均滞在期間は3日間、アジア以外では7日間というデータも公表した。
2004年設立のカヤックは現在、世界40カ国・地域で20言語のサイトを運営しており、毎年15億回にのぼる旅行関連情報の検索処理を行う世界の大手メタサーチ。アプリのダウンロード数は約6,000万回。モバイルあるいはアプリでの利用者は米国で全体の43%でPCでの利用者が多いが、日本を含めたアジアは米国よりもモバイル率は高く、このトレンドは続くと見ている。利用者の属性は20代後半から40代のいわゆるスマートフォン世代、男性よりも女性が多く、レジャーとビジネス双方で利用されているという。
取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹