シートリップは、約1億2,000万人の中国人の海外旅行のうち、実に30%を取扱うといわれる中国最大のオンライン旅行会社だ。そんな同社は、日本市場でどのようなビジョンを描いているのか? WIT Japan 2017に参加したシートリップ・ジャパンGMの吉原聖豪(ピーター吉原)氏に聞いてみた。
最大のミッションは日本人に海外旅行で使ってもらうこと
シートリップは現在、中国以外では日本、韓国、シンガポール、香港、台湾に支社を開設。アジアへの進出を積極的に進めている。吉原氏は、それらアジア展開の中でも同社が高く期待を寄せる日本語サイト(jp.ctrip.com)の責任者だ。
「私のKPIは、日本人のアウトバウンド旅行者(海外旅行者)にシートリップを使ってもらうこと」と話す。以前はエクスペディア・グループのホテルズ・ドットコムで日本・韓国担当マーケティング・ディレクターを務めており、その経験を中国最大手OTAのグローバル化に活かしている。
日本語サイトの主力商品は航空券だ。「航空券の価格には自信がある」と吉原氏。航空券は全社的に力を入れており、中国への国際線や中国国内線だけでなく、日本発着すべての国際線の取り扱いを増やし、「世界中どこへ行くときも使えるOTAとしての認知度を上げていくのが最大のミッション」と話す。買収したメタサーチ「スカイスキャナー」とのシナジー効果も出始めているという。このほか、日本語サイトではホテルや中国国内の鉄道も取り扱う。「ホテルは競合が多いが、鉄道はシートリップの強み。中国でわざわざ駅に行って切符を買う必要がない。シートリップだと日本語で予約もできるので人気」と自信を示す。日本語版アプリも提供しているが、日本での予約は圧倒的にPC経由が多いという。
本家の中国では、航空券、ホテル、鉄道のほかにも旅行保険、クルーズ、パッケージ、Wi-Fiなどさまざまな旅行商品をワンストップで購入できる点が高く評価されているが、日本語サイトでは「まず使ってもらって、その便利さと安さを知ってもらうのが先。ある程度スケールメリットが出てきたら、新しい素材を追加していく」との戦略だ。
日本のメタサーチと組んで認知度向上と販売網拡大
現在のところ、日本人ユーザーは「圧倒的にビジネス需要」だという。一番売れているデスティネーションは上海。そのほか北京、広州、西安、香港、台北といった中華圏のほか、ソウルもトップ10に入る。「年に1回か2回のレジャートラベラーにシートリップを使ってもらうのはハードルが高い」という現状認識だが、「まだまだ日本人が使いやすいサイトに改善していく余地はある」として、レジャー市場での成長も見据える。
「先日、先輩にシートリップの日本発サンフランシスコ着の航空運賃を見せたら、『他社よりも安い』と驚いていた」と吉原氏は自身のエピソードを紹介。知らなければ使ってもらえない。「そこはチャレンジングだが、やりがいがある」と意欲的だ。
シートリップ・ジャパンとしては、「トラベルコ」、「Travel.jp」など日本のメタサーチや航空専門ニュース「FlyTeam」に掲載するなどで販売網の拡大に取り組んでいる。「旅行関係にかかわらずユーザーが多いサイトとパートナーを組むことで収益だけでなく認知も上がる」と話す。
ホテルズ・ドットコム時代は、その戦略で確実に成果を上げてきたことから、シートリップでもパートナーシップを重視していきたい考えだ。
同社は中国人の訪日旅行(インバウンド)で日本の存在感を高めてきた。今後は、日本人ユーザーの取込みで存在感を高められるのか?その挑戦は、今後も注視してみたい。
取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹