観光と極めて親和性の高いインスタグラム。各国の観光局や観光関連事業者はその「インスタ映え」の影響力に注目し、インスタグラムを活用したプロモーションや情報発信に力を入れている。日本政府観光局(JNTO)も、先ごろ公式アカウント@visitjapanjpを開設。それに合わせて、インスタグラムも訪日促進キャンペーン「#unknownjapan」を始めた。
自治体やDMOなどが観光促進でインスタグラムを効果的に活用する方法とは?インスタグラム公共政策マネージャーで「#unknownjapan」プロジェクトでもマネージャーを務めたジョン・タス-パーカー氏に聞いきた。
日本はインスタ映えする国、訪日需要喚起で大きな影響力
世界のインスタグラムのアクティブユーザー数は月間8億人を超えている。日本でもユーザー数は急増しており、ICT総研による最新の調査では、2017年の国内SNS利用者に占める割合は前年の22.1%から28.6%に上昇した。また、インスタグラム最高製品責任者のケビン・ウェイル氏によると、2017年前半だけで約300万人の訪日外国人が約2,000万件の日本での旅の様子を投稿したという。
タス-パーカー氏は、日本でインスタグラムが成功している理由のひとつとして、同社COOのマーニー・レヴィーン氏の話を引用し、「日本は世界でも有数のビジュアルカルチャーを持っている国」であることを挙げた。また、日本にはサービス開始当初からインスタグラムを利用するコミュニティーが多く、継続的に発信してきたことも大きいようだ。「さまざまなストーリーが彼らから発信され、それに触発された世界の旅行者が日本を訪れる」という流れができているという。
成功のカギはインスタグラムコミュニティーの連携
そのうえで、タス-パーカー氏は自治体など公的機関がインスタグラムを効果的に活用するカギとして、「日本にいるインスタグラムコミュニティーと協力することが大切。彼らは彼ら独自の視点や経験をシェアする方法を知っている」と話す。
アカウントを開設したら、自ら投稿をするだけでなく、インスタグラムのヘビーユーザーにもアカウントへの投稿を促す。彼らは数多くのフォロワーを抱えているため、彼らを通じて「インスタ映え」する画像や動画が世界に拡散される。
今回、JNTOの公式アカウント開設のイベントには30人のインスタグラマーが集結。その総フォロワー数は100万人を超えるという。「日本のインスタグラマーはそのまま観光大使になりうる」(タス-パーカー氏)。
タス-パーカー氏の担当は、各国の観光局や行政機関に対してインスタグラムの活用をアドバイスすること。時には「#unknownjapan」のようなプロジェクトの立ち上げにも関わる。
これまで携わってきたなかで個人的に気に入っているプロジェクトとして、ニューヨーク市が行った「Signs of Spring」というキャンペーンを紹介した。これは、市当局が5人のインスタグラマーを任命。それぞれがマンハッタン、ブルックリン、クィーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドの5つの地区で春の訪れをテーマとする画像を投稿することで、ニューヨークの多様性を表現した。タス-パーカー氏「行政がインスタグラムコミュニティーと協力したいい例」と評価する。
また、オーストラリアのクィーンズランド州では、同日に州の各地でインスタグラマーが集まるイベント「インスタミート」を開催。何千というインスタグラマーが集まり、1日で大量の画像や映像を投稿し、世界のコミュニティーとシェアをした。いわゆるバズマーケテイング的な仕掛けもインスタグラムコミュニティーを活用した例だ。
進化するインスタ機能に合わせてプロモーション戦略を
「インスタグラムは、スマートフォンやカメラの機能の変化に応じて常に進化している」とタス-パーカー氏。最近では、「ストーリーズ」という新たに機能も追加した。これは、通常フィード(タイムライン)とは別に写真や動画の投稿・共有やライブ配信ができる機能のこと。フィードでは時系列や独自のおすすめ度によって投稿が流れるが、ストーリー投稿は画面上部の別枠(ストーリートレイ)に表示される。これによって、共有がリアルタイムでできるようになった。タス-パーカー氏によると、すでに世界で1日2億5,000万人がこの機能を利用しているという。
インスタグラムは当初画像のみの投稿だったが、その後動画が投稿できるようになり、さらに長い動画の投稿も可能になった。そして、ストーリーズの追加。タス-パーカー氏は「機能の進化にともなって、インスタグラマーの投稿の仕方も変化している。観光局や観光関連事業者は、ストーリーズなど新しい機能を、それぞれのインスタグラム戦略に組み込んでいくことが大事」と強調した。
取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹