DMOにとって、旅行者がどのようにして行き先を決定するのか見極めることは、必ずしも簡単な課題ではない。多くの旅行者は、次の旅行でどこに行くかを、あらかじめ定められた要素、例えばコンサート、フェスティバルなどのイベント、別荘の場所、親戚の住む場所などに基づいて決めている。一般的にこういった旅行者は、いつどこに行くか最初から分かっている。
一方で、近日公開されるフォーカスライトの「米国消費者旅行レポート第10版」によると、5人中2人の旅行者は、他の要素に全く無関係に目的地を選んでいるという。言い換えれば、彼らには特定のしばりがなく、旅行先の選択肢は無限なのだ。
個人的なつながりや社会的義務以外の理由で行き先を決定する旅行者の多くは、旅行の目的地とより深く関わりたいと望んでいる。彼らは次の休暇にどこに行くかを必ずしも決めていないかもしれないが、旅先の文化を深く知ったり、素晴らしい自然を観たり、冒険旅行を体験したいなどと思っている。DMOなどデスティネーション・マーケターにとって、このような旅行者は数々の理由で魅力的なグループといえる。
目的地選びを白紙の状態から始める消費者は、外部からの影響とマーケティングの働きかけを、より受け入れやすい。つまり、的確なタイミングで的確な客層に対する魅力的なプロモーションをおこなえば、まだ行き先を決めていない観光客をそれぞれの目的地とつながりを持つ旅行者に変えることができるのだ。冒険旅行や教養を高めることを求めている人々は、あらかじめ定められた理由で旅行する人々より長い休暇を取る傾向にある。旅行期間の長期化は、DMOにとって望ましいことだ。旅行者は目的地により深く関わって理解を深めるばかりでなく、より多くのお金を落としてくれる。
以下は、旅行の動機と期間の関係を分析したグラフ。特定のイベントに参加する(Attend a specific event)場合は長めの週末旅行が5割以上を占め、長期休暇をとる割合は2割程度。一方、教養を高めるための旅行(Cultural enrichment)や新たなことを学ぶための旅行(Learn something new)ではは長期休暇を使うケースが最多。トレッキングやハイキングなどの冒険旅行(Adventure travel / hiking, trekking, etc)では、短期旅行と長期休暇が同程度の割合を占める様子が分かる。
通常、旅行の背景には目的がある。しかし、なんの縛りもなく好きなことをして過ごせる場合、旅行者はどのようにして目的を満足させる旅行先を選ぶだろうか? 彼らはどこでインスピレーションを得て、どんな観光プロフィールによって特定の目的地を選ぶだろうか? 他の要素と無関係に選ばれた旅行の背景にある動機を理解することは、観光マーケティングにとって非常に重要なことだ。フォーカスライトでは、世界7大市場からの旅行者が旅行先を決定するプロセスを調査するプロジェクトを進行中だ。興味があれば、ぜひそのリサーチに加わってみてはどうだろうか?
※編集部注:この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が公開した英文記事について、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。
著者:ブランディ・ライト(アナリスト)