英国当局が旅行予約サイトの「あおりセールス」を問題視、エクスペディアとブッキングが検索結果の表示見直しに着手【外電】

エクスペディア・グループとブッキング・ホールディングス傘下にある複数のオンライン旅行ブランドが、このほどホテル検索結果の表示方法を見直すことに合意した。各社とも、公正な競争を求める英国当局による調査を受けていた。

英国における公正取引委員会に相当する官庁、競争市場庁(CMA)が問題視していたのは、昨今よく見かける、いわゆる“あおりセールス(pressure selling)”だ。事実とは異なる印象を与えかねない割引表示や、検索結果に対するコミッション料の影響、明示されていないが実際には必要となる手数料の有無などについて、調べていた。

英当局からの調査の対象となったのは、エクスペディア、ブッキングドットコム、アゴダ、ホテルズドットコム、Eブッカーズ、トリバゴなど。このうちエクスペディア・グループ傘下にあるのが、エクスペディア、ホテルズドットコム、トリバゴ。同様にブッキング・ホールディングス傘下はブッキングドットコムとアゴダの各サイトになる。

※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

CMAは2018年から動き出しており、法的な強制措置を執行する可能性もあったが、今回、オンライン旅行サイト側は、あくまで「自発的に(表示方法の変更に)同意した」としている。

エクスペディアやブッキングにとって特に重要なことは、CMAが各サイトの運営手法について、違法だという結論を下したわけではないという点だ。法的な判断は裁判所がおこなう。当該OTA各社がサイト見直しに同意したからといって、必ずしも違法行為を行っていたわけではない。

各サイトでは、今後、買い手にプレッシャーをかけるような販売手法は控えるとしている。具体的には「ホテルの客室在庫や人気について、実態よりも“盛った”印象」になるような表現の使用などが、こうした行為と見なされる。予約サイトでよく見かけるフレーズ「このホテルを今、10人の人が見ています」などが一例だ。

そのほか、割引の宣伝では、販売在庫がある商品だけをプロモーションすること、税金を含め適用対象となるすべての手数料を、見出しの価格欄に記載することも明言した。

CMAのアンドリュー・ティリエ会長は「ホテルのオンライン予約で横行している、誤解を招くようなセールス戦略や、手数料を明示しない手法、そのほかの芳しくない慣例を終わりにするべく、取り締まり強化に動いた」と話す。

「今回対象となった6つのサイトでは、こうした手法を行わないよう、厳重な改善策に着手している。いずれも大手のホテル予約サイトばかりだ。CMAでは引き続き、他の同業者も対象に拡げながら、同様のスタンダードをクリアしているか調査を進める」としている。

前述のすべてのサイトで、問題手法が確認されたわけではない。だがいずれのサイトも、CMAが要求する修正に応じる方針だ。

定められた修正期限は2019年9月1日。今回、直接の調査対象にならなかったサイトも同じだ。

オンライン予約サイトの手法について、見直しを強く要望していた団体の一つに、B&B協会がある。同協会ではすでに2017年、OTAに対して正式に抗議しており、5つの要望を掲げていた。B&B協会のデビッド・ウェストン会長は、今回の知らせを「歓迎」している。

「CMAが調査する事態が示している通り、オンライン大手が旅行業界を凌駕するようになるなかで、印象操作や不正な行為も横行している。その犠牲になっているのは消費者やB&B経営者のような中小業者だ」と同会長は指摘している。

エクスペディアとブッキングの反応は

エクスペディアとブッキングの公式見解は、当局による調査が穏便に終了したことを歓迎する、というものだ。万一、両社がCMAへの協力を拒否し、当局が法的手段へと動き出す事態に発展していたなら、かなり厳しい立場に置かれていただろう。

ブッキング・ホールディングスの広報官は、CMAの捜査が終了し、ブッキングドットコム、アゴダ、カヤックのいずれにおいても、法令違反は認められなかったことを「喜んでいる」とコメント。

さらに「CMAとの協議を踏まえて、当社では、新しい責務を果たすべく、手数料を含む包括価格の提供などに取り組むことに合意した。消費者に対する透明性確保を求める英国の基準をすべて確実にクリアできるようにする」(同社広報)としている。

これに対し、エクスペディアでは、CMAが発表した「当社とのこれまでのパートナーシップ」に関する説明について「驚き、失望している」とコメント。「業界のスタンダード確立を目指し、誠実に対応し、協力してきたが、これでは間違った解釈を与えかねない」とし、「これまでの手法は、消費者保護の法に抵触していない」との見解を固持している。

その一方で、「(消費者保護の)新基準は業界すべてが対象であるとCMAが明白に示したことは歓迎する。すなわちOTAだけでなく、検索エンジン、メタサーチ・サイト、宿泊サービスの直販サイトなどすべてが対象ということだ」とエクスペディアでは指摘している。

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

※オリジナル記事:Expedia and Booking Agree to Changes on Search After UK Investigation

著者:スキフト パトリック・ワイト(Patrick Whyte)氏

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