観光庁は、観光地における混雑やマナー違反などの課題に対する関心の高まりを受けて設置した「持続可能な観光推進本部」で、日本における現状と今後の取組みの方向性を取りまとめ、発表した。
観光庁では、2018年版観光白書でオーバーツーリズムについて「特定の観光地において、訪問客の著しい増加等が、市民生活や自然環境、景観等に対する負の影響を受忍できない程度にもたらしたり、旅行者にとっても満足度を大幅に低下させたりするような観光の状況は、最近では『オーバーツーリズム(overtourism)』と呼ばれるようになっている。」と記載。
また、世界観光機関(UNWTO)では2018年9月、「観光地やその観光地に暮らす住民の生活の質、及び/或いは訪れる旅行者の体験の質に対して、観光が過度に与えるネガティブな影響」と定義。オーバーツーリズムは適切な観光地マネジメントの欠如と無秩序な開発によって起こるとの認識を示した。これらを踏まえ、同観光進本部では本取りまとめに「オーバーツーリズムは、持続可能な観光を実現するために向き合わねばならない重要な課題の一つ」と記載している。
同推進本部では2018年6月の発足以降、オーバーツーリズムに関する課題に対象を絞った取り組みを実施。地方自治体へのアンケート調査や地方自治体と有識者へのヒアリング、国土交通政策研究所での調査結果を踏まえ、国内外の先進事例を整理し、今後の方向性の検討を進めてきた。
その結果、全国的な傾向として現時点では、他の主要観光国と比較してもUNWTOが定義するオーバーツーリズムが、広く発生するには至っていない」という認識。(1)観光が市民生活にネガティブな影響を与えていると感じたり、観光地のマネジメントに改善を求めたりする人々の割合が、他国に比べて相当程度低い、(2)訪日外国人旅行者の満増度は低下しておらず、非常に高いレベルで推移している、(3)観光地で訪日外国人が増加したという情報が、大半の日本人の旅行者の旅行判断にほとんど影響していない、という3点が理由だ。
今後の取組では、京都などの代表的な観光地で、混雑やマナー違反等に関するモデル事業を実施。収取した国内外の先行事例とともに、全国に横展開していく方針。各地方自治体やDMOが現状に関する多面的な調査結果に基づいて持続可能な観光地経営が行なえるよう、国際基準に準拠した「持続可能な観光指標」を開発し、普及させることも盛り込んだ。
取りまとめの本文・概要と先進事例(付録1)は以下のリンク先へ。
観光庁「持続可能な観光先進国に向けて」(本文)(PDF:4681KB)、(概要)(PDF:1416KB)、(付録1)(PDF:5746KB)