高級宿泊施設予約サイトの一休は、メディアカンファレンスを開催し、2018年度の営業報告と今後の取り組みについて説明した。現在、一休は主力事業の宿泊とレストランに加えて、バケーションレンタル、スパ、メディア事業を展開。今年10月には会員数が1000万人を突破した。同社社長の榊淳氏は「『こころに贅沢させよう』をミッションに、引き続き尖った分野で勝負していく」と説明。今後はAIをベースとした顧客へのパーソナライゼーションで高級志向のユーザーの期待に応えていく方針を示した。
2018年度で一休が取り扱う宿泊施設は約6000軒、レストランが約8000軒と大幅に増加した。宿泊施設軒数は国内約8万4000軒の7%、レストラン軒数は国内81万軒の1%に過ぎないが、榊氏は「それだけ高級宿泊・レストランという尖った分野に特化している」と一休の事業展開を説明した。また、取扱高も2016年3月にヤフーの完全子会社になって以降、そのシナジー効果によって大きく増加。宿泊事業は2014年の505億円から2018年度は倍以上に伸びた(ヤフーによる買収以降、取扱高は非公開)。榊氏は「ヤフーは最大のトラフィックホルダー。国内のオンライン予約がそれほど伸びていないなか、群を抜いた成長を遂げている」と自信を示す。
顧客層については、年間利用金額80万円〜199万円の層が2008年度比で5.6倍に拡大し、年間200万円利用のユーザーも8.1倍に急拡大。「頻繁に高級ホテルやレストランに行き、年間100万円利用する層がヘビーユーザー」だという。一休では、利用金額に応じて、4段階の会員に分類しているが、最上級のダイアモンド会員が増加しており、その消費志向としてコストパフォーマンスよりも「圧倒的な最高の体験」を期待する「プライスレス消費」を求める傾向が強まっているという。それに合わせて国内OTAのなかで一休が独占販売を結んでいる最高級宿泊施設「一休Plus+」の予約も増えていると説明した。
また、2016年11月にローンチしたバケーションレンタルの取り扱い軒数は2019年8月現在で780施設にまで拡大。ヴィラ、高級別荘、古民家、レジデンス、町家などを扱い、その平均利用人数は3.5人、3人以上の利用が全体の58%を占め、平均利用単価は1施設あたり5万円となっている。
レストランの顧客層については、全取扱高の35%がカップルで、男女グループの30%、マダムグループの25%、おじさまグループの10%と続く。カップルのデートでは1万円ディナー、マダムグループでは3500円のランチが人気だという。また、カップルで利用したユーザーが会社の食事会の幹事となる「多重人格化」の傾向があり、リピーターの増加にもつながっているという。
スパは昨年11月にラグジュアリースパの予約サイトとしてリニューアルオープン。それまではeチケットの販売だけだったが、オンライン予約の開始で2019年上半期は取扱高が大きく伸びた。現在は、高級ホテルのスパを中心に約140軒を掲載している。
AIアシスタントのパーソナライゼーションに注力
今後の事業展開について、榊氏は「AIをベースとした徹底した顧客へのパーソナライゼーションを進める。AIに対応できなければ、一休は予約サイトとしての存在意義が問われることになる」と説明。今後は人力から機械がリードし、人がサポートする世界へと変化するとしたうえで、次世代AIアシスタントの開発を積極的に進める考えを示した。
そのうえで、目指すパーソナライゼーションとして、同じ検索条件でも顧客ごとに検索結果を変える「リコメンド」、顧客ごとにコミュニケーションの内容やタイミングを変える「CRM」、同じ商品でも顧客ごとに値段を変える「パーソナライズ・プライシング」を進めていく考え。パーソナライズ・プライシングでは、これまで蓄積してきたデータから予約確率と予約金額の予測を立て、それに応じてクーポンの価格を顧客ごとに変動。データ予測をもとにクーポン価格を提示すれば、予約率は上がり、クーポンコストを差し引いても、トータルリターンは増加する。榊氏は「(パーソナライズ・プライシングは)経済合理性に基づいたもの」と説明した。
このほか、榊氏は宿泊施設の直販についても言及。「直販が増えているのは事実」としながらも、「一休の顧客は、複数の高級ホテルのロイヤルティ会員になっているような層」としたうえで、特定の都市滞在がメインのビジネス需要であれば、直販は有効だが、デスティネーション優先のレジャーでは、OTAとしての一休の存在価値は今後も高いとの見解を示した。