シンガポール政府観光局(STB)は、ITBアジア2019で旅行系スタートアップ企業を支援する「シンガポール・ツーリズム・アクセレイター」プログラムを立ち上げ、プログラムパートナーであるファンド8ともに、その対象企業として9社を選定した。このプログラムでは、6ヶ月間の試験期間の資金を提供。選定されたスタートアップは、その期間にそれぞれのソリューションの実用性を高めていく。
160社以上の候補スタートアップからシンガポール、香港、タイ、インド、オーストラリア、イギリス、オランダの9社が選ばれた。いずれのアイデアも旅行ビジネスに関わり、生産性の向上や旅行者の経験を高めるもの。STBは、このプログラムを通じて、シンガポールの観光産業の将来的な課題を解決するソリューションを育てていく。
たとえば、シンガポールから選ばれたInfinitoは、AIを活用したホテル価格推奨ソリューションを開発。ホテルが過去に決めた価格から学習し、収益を最大化する価格を決定。データをプロモーションに活かしていくほか、将来の意思決定の手助けをする。
また、同じくシンガポールのGood for Foodは、「スマートゴミ箱」を開発。これを利用することで、ホテルなどの施設は食品ロスを減らすことができると期待されている。センサーと画像認識技術を活用することで、ビュッフェラインやレストランのキッチンから食品ロスを追跡し見つける。これにより、より効率的な在庫管理を実現。すでに「スマートゴミ箱」は、30〜40%の食品ロスの削減に成功し、最大8%ものコスト削減を実現したという。
オーストラリアのPlatterは、AR技術を活用して旅行者の体験を高めるプラットフォームを開発。プラットフォーム上にテンプレートや制作ツールを用意することで、観光施設や観光ビジネス事業者は、専門の開発者に頼らなくてもプラットフォーム上でそれぞれのARツールを制作することができる。
選定された9社は今後、ワークショップ、ネットワーキング、セッションなどを実施するとともに、プログラムパートナーであるマリーナ・ベイ・サンズ、リゾート・ワールド・セントーサ、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイと協業して、それぞれのソリューションのテストを行う。
今年12月には、STB、ファンド8、プログラムパートナーがテストを評価し、パイロット事業となる次の段階に進む企業が選ばれる。パイロット事業に進んだスタートアップには、さらに最大2万5000ドルの資金援助が提供される。その後、2020年に3月には、パイロット事業に残ったスタートアップは、ステークホルダーや投資家に対して事業の結果を報告し、ソルショーンのデモンストレーションを行う。
STBは今年11月にも、シンガポール・ツーリズム・アクセレイターに参加するスタートアップ3社を募集する予定だ。