政府は2020年度(令和2年度)の政府予算案を閣議決定した。観光庁関連予算は、対前年度1.02倍の680億9400万円。このうち国際観光旅客税財源として510億6100万円を充当した。これに、東北復興枠33億9500万円を加えると予算総額は714億8900万円となる。
国際観光旅客税財源については、総額は540億円になるが、三の丸尚蔵館の整備で宮内庁予算に計上する29億円を差し引いた510億6100万円を観光庁に一括計上し、予算成立後に関係省庁に移し替えて執行する。このため、観光庁に充当されるのは226億4000万円となる。
具体的な施策としては、「ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備」「我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化と観光産業の基幹産業化」「地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上」の3点を柱に予算化した。
ストレスフリー観光の環境整備:273億8100万円(278億6500万円)
東京2020を控え、空港におけるFAST TRAVELを推進(31億7600万円)。具体的には、顔認証による旅客搭乗手続きの円滑化、自動チェックイン等による旅客利便増進、電子タグ手荷物把握システムを進める。
公共交通利用環境の改革では44億円を計上。地方部への訪日外国人旅行者の誘致の加速化に向けて、ゲートウェイとなる空港や港湾から訪日外国人旅行者の来訪が特に多い観光地までの既存の公共交通機関などで、多言語対応、無料Wi-Fiサービス、トイレの洋式化、キャッシュレス決済対応を推進。さらに、二次交通について、多様な移動ニーズにきめ細やかに対応する新たな交通サービスの創出を促進するともに、「観光地型MaaS」の実装に向けての取り組みを支援する。
また、共交通機関の駅からそれぞれの観光スポットまで、ICTも活用して、多言語案内標識や無料エリアWi-Fiを整備するとともに、域内の小売・飲食店でのキャッシュレス決済対応を進めることで、「まるごとインバウンド対応」を推進。外国人観光案内所や「道の駅」の機能強化、古民家等の歴史的資源や自転車の活用などを集中的に支援することで、「まちあるき」の満足度の向上を目指す(25億3500万円)。
戦略的訪日プロモーションと観光産業の基幹産業化: 156億5300万円(148億7600万円)
戦略的な訪日プロモーションの実施では、日本政府観光局(JNTO)運営費交付金として87億1700万円を計上。2020年訪日外国人旅行者数4000万人の目標達成に向けて、地域への誘客を強化しつつ、アジアからの取り込みを徹底するとともに、欧米豪からの誘客に取り組む。さらに、2030年訪日外国人旅行者数6000万人等の目標達成を見据え、全世界からの誘客促進に向けた取組を推進する。このなかで、JNTOによる一元的な情報発信・地域プロモーション支援のために体制を抜本的に強化する。
また、アウトバウンド施策として、教育旅行を通じた青少年の国際交流の促進で1000万円を計上。バランスの取れた相互交流や、各国の将来を担う青少年交流のより一層の拡大に向け、教育旅行による双方向交流の拡大を促進する。
地域の観光資源の整備、体験滞在の満足度向上: 237億3800万円(224億4100万円)
観光地域づくり法人(DMO)の改革として7億4000万円を計上。インバウンドに対応したマネジメント体制が確立された観光地域づくり法人を対象に、地域全体の経済効果を高めるための投資戦略やビジネスモデルを確立するための外部専門人材の登用(観光地域づくり法人と専門人材のマッチングを実施)やOJT派遣や視察、研修・セミナー等の受講による中核人材の育成を推進。さらに、新たな滞在型コンテンツの創出に向けて、地方運輸局が主体となって事業対象の地域の観光資源の掘り起こし、地域資源を活用したコンテンツの企画・立案、モデルツアーの実施を支援する。
国際競争力の高いスノーリゾート形成促進事業で新たに20億円が計上された。スノーリゾートへのインバウンド需要をタイムリーかつ的確に取り込むため、インバウンド需要を取り込む意欲・ポテンシャルの高い地域における国際競争力の高いスノーリゾート形成のための取組を促進する。補助対象事業は、アフタースキーのコンテンツ造成、グリーンシーズンのコンテンツ造成、受入環境の整備(多言語対応、Wi-Fi整備、キャッシュレス対応、公衆トイレの洋式化など)、外国人対応可能なインストラクターの確保、二次交通の確保(スキー場間の周遊等のためのバス運行の実証実験)、情報発信(プロモーション資材の作成など)、スキー場インフラの整備。
さらに、新しい施策としては、ナイトタイム等の活用による新たな時間市場の創出では10億円が計上された。文化庁と環境省と連携し、地域における夜間・早朝の回遊性を高めることで、訪日外国人の旅行消費額の増加や滞在の長期化を狙う。具体的には、DMOを中心とした、地域におけるナイトタイム/モーニングタイムの活用に向けた取組を総合的に支援するほか、地域において「面的」にナイトタイムなどの魅力を向上させるため、博物館・美術館や国立公園における取組とも一体的に実施する。