JTBは、2020年の旅行市場の見通しと2019年の実績推計をまとめた。それによると、2019年の日本人の総旅行者数(延べ人数)は前年比0.3%増の3億490万人になると推計。内訳は、国内旅行者数が前年とほぼ同じ2億8490万人、海外旅行者数が同5.5%増の2000万人。海外旅行では、旅行者数は増加するものの、消費額は同3.7%減、平均消費額も同8.7%減となる見込み。
2020年の見通しについては、総旅行者数(延べ人数)が前年比0.7%増の3億712万人と推計。そのうち、国内旅行者数は同0.5%増の2億8632万人、海外旅行者数は同4.0%増の2080万人。訪日客は同7.9%増の3430万人と見通している。
旅行総消費額は同4.8%増の15兆6300万円に達する見込みで、そのうち国内旅行が同4.6%増の10兆9200億円、海外旅行が同5.1%増の4兆7100万円。平均消費額は国内旅行が同4.0%増の3万8130円、海外旅行が同1.1%増の22万6600円と推計した。
海外旅行、羽田増便と円高傾向などが後押し
2020年は羽田空港の国際線発着枠の増加に伴う増便や、訪日外国人旅行者数の伸び率低下による日本人旅行者へ提供される航空座席数の増加、為替の円高傾向などが海外旅行のプラス材料となると予測。また、出国率の上昇をけん引するジェネレーションZ世代(20代前半)の卒業旅行を含めた海外旅行が市場を後押しするとしている。
そうした要因から、2020年の海外旅行者数は増加と予測するものの、昨年のGW10連休の反動等を踏まえて4.0%増に抑えた。平均消費額は、欧米路線の増加から長距離旅行やビジネス需要の増加を見込み、1.1%増と推計している。
国内旅行、消費税増税の影響が薄れる後半に需要増
2020年前半は前年のGWの反動や景況感、東京オリンピック前後の首都圏を中心とした旅行抑制の影響などで勢いがないと考えられるが、後半には消費税増税の影響が薄れ、オリンピック後の宿泊施設料金も落ち着くと見られることから、旅行人数は微増を予測。平均消費額については、消費税増税の影響と、東京オリンピック開催による宿泊料金の上昇などから、昨年より増加すると見込む。
また、2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」、東京ディズニーランドにオープンする「ニューファンタジーランド」、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにオープンする「SUPER NINTENDO WORLD」、東京・有明にオープンする「スモールワールズTOKYO」なども需要を喚起すると予測している。
訪日旅行、アジア新興国からの増加で前年比7.9%増
2020年は、東京オリンピック開催による訪日外国人旅行者の増加が期待されるものの、ラグビーワールドカップとは異なり、開催地が東京中心で開催期間も短いことから、訪日客は観戦者が中心となり、爆発的な増加は考えにくいと見通す。
そのうえで、2020年の訪日外国人旅行者数は、世界景気の減速による減少の懸念はあるものの、低迷する韓国からの旅行者が前年比15%程度まで回復すると仮定し、東京オリンピック開催による波及効果、今年1月から中国やインドを対象にビザの発給要件が緩和されたことや日本路線の増便、旅行者の伸びが続く中国、および経済成長の著しいアジア新興国からの旅行者数の増加が見込まれることから、前年比7.9%増の3430万人と推計した。
この調査は、1泊以上の日本人の旅行(ビジネス・帰省を含む)と訪日外国人旅行について、各種経済動向や消費者行動調査、運輸・観光関連データ、JTBグループが実施したアンケート調査等から推計したもので、1981年より継続的に実施しているもの。