全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)会長の多田計介氏が、2022年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
多田会長は、今こそ生活衛生分野での長い歴史とノウハウを生かす時とし、各都道府県との協定のもと、資源を活かして医療サービスと連携した安心安全な避難所づくりを進める方針を示した。また、観光産業の社会的評価を上げる必要性を指摘。社会貢献活動などを積み重ねながら必要なことには声を上げ、諸法の罰則規定などを宿泊業界から切り離すことで、真の国際観光立国にふさわしい宿になるとの信念を述べた。
さらに2022年は、全旅連の全国大会が100回目を迎える。多田会長は先人たちの歩みを深く受け止めながら、次世代にバトンを渡すためにもSDGsなど国際協調とバランスを有する業界に脱皮すべきとし、そのスタートラインに立つ意気込みも示している。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
2022年 年頭所感
2022年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
まず改めて、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた全ての皆様に、心からの哀悼の意を捧げます。一方、感染症との闘いの最前線に立ち続けた医療関係者の皆様、それを支えられた関係者の皆様には心から感謝申し上げます。
昨年は、ひたすら耐えた一年でした。どの業界よりも耐えなければならない一年でした。全国の組合員の皆様と共に不条理を喪失感とともに感じた一年でした。
思えば私たちは、感染症や食中毒に関しては予防から対策まで厚生労働省並びに観光庁の指導の下に徹底して参りました。しかしながら、そのことが今回通用しませんでした。その大きな理由は、館内だけを想定した対抗策だったからです。今回のような世界を席巻する感染症のような場合、私たちの努力の及ばない結果となりました。
しかし、気づかされたこともいくつかあります。お客さまの生命を預かる安全で安心な宿であることの再認識。そのためには従業員も守らなければならないということ。感染症の影響でお客さまのニーズも変わってきました。旅行時の選択理由に温泉、自然、グルメに安全安心が加わりました。
幸いにも第五波の脅威が過ぎ去り感染者、重篤者、死亡者いずれも収束しつつあります。ここで気を緩めてはならないということは理解していますが、私たちは生活衛生という分野で長い歴史とノウハウを蓄積してきています。この資源を今こそ生かす時だと思うのです。私たちは、他の模範となり、これからも社会のために、この資源を生かすことで貢献する立場でもあります。そのためには、私が都道府県組合の理事長様と取り組んできたテーマの一つであります災害時の地域連携・地域貢献として各都道府県と協定を締結することができました。この連携協定に基づき、医療サービスを組み合わせた安全安心な避難所づくりの具現化を進めようと思います。
具体的には、医療機関サービスを補完する医療ベンチャーと連携し、東京都ホテル旅館生活衛生同業組合の協力を得て、深夜、休日にも医療サービス体制を確立する実証実験を行いました。幸いにも事例は一件もありませんでしたが、協力をいただいた宿の皆様からは感謝のお言葉を多数いただき、この医療サービスの継続を強く望まれております。この医療サービスを今後、全国展開することで24時間365日安全安心な宿であるということを社会にアピールしたいと思います。
このような社会貢献活動の積み重ねが業界全体のイメージアップにつながります。観光産業は国を担う基幹産業の一つになってきたと思っています。製造業と比較して、その構造が明確に体系化できないために評価が低かったと思うのです。しかし、観光産業は外貨を稼ぎ、国内消費を拡大させる産業です。そのためには社会的評価を上げねばなりません。つまり、やることはやり、言うことは言う。そして、私たちに関わる諸法の罰則規定や取り締まり色が強いものを宿泊業界から切り離すことができれば、その時こそ真の国際観光立国にふさわしい宿になると信じています。
また、今年、全旅連は東京で全国大会が100回目を迎えます。このことは先人が何よりも社会と共に歩んできた証であります。私たちはこのことを深く受け止め、次代を担う人たちにバトンを渡さねばなりません。そのためには、国際性や多様性といった視点だけでなく、SDGsといった国際協調とバランスを有する業界に脱皮しなければなりません。私たちはそのスタートラインに立つのです。
最後になりましたが、本年が皆様にとりまして良き年になりますことを祈念致しまして、ごあいさつといたします。
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会
会長 多田計介