日本旅館協会会長の浜野浩二氏が、2022年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。
浜野氏は、冒頭の振り返りで「業界にとっては悲惨を極めた2年間だった」と表現。第六波の懸念もあるものの、基本的な医療体制の整備や感染対策の徹底を経て本来の生活に戻っていくと期待できるとする。しかし一方で、インバウンドが剥落したままでは、業界が受けたダメージからの回復は困難であると説明。同協会が政府に申し入れている「GoToトラベルを目的とすることではなく、手段とすべき」といった提言にも触れながら、金融対策や雇用の確保、施設の整備などに注力する必要性を強調。正しい情報の中で安全安心な旅を増やすことこそが最重要課題であり、業界の「黎明」につながると述べた。
発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。
2022年 年頭所感 ―黎明―
新年あけましておめでとうございます。
今年こそこの悪夢のようなコロナ禍から抜け出して、確実に明るい未来へ踏み出せることを心から願い新年を迎えました。
2月で丸二年になります。業界にとっては悲惨を極めた2年間でした。
今、日本のワクチン接種率が80%に近づき、治療薬も近々服用可能との中、感染は不思議なほど急速に収束しています。
新型コロナウイルスの変異株「オミクロン」の確認など第六波が懸念されていますが、本来あるべき対策として医療体制を整え、ワクチン接種、手洗い、マスク着用など基本的な感染対策を徹底するなら、そこから急激に本来の生活に戻っていくと考えられます。
しかし、この2年間で受けた被害は余りにも大きく、GoToトラベルや各都道府県のキャンペーン等で国内旅行がコロナ前の水準に近づいてもインバウンドが剥落したままであれば、我々業界が2年間で負ったダメージから這い上がる事はほとんど不可能です。
雇用調整助成金も今年3月で終了とのこと。これまでの様々な金融支援の更なる拡大の要望に対して前向きな回答はいただいておりません。
我々業界は据野が広く、観光関連の従事者は900万人とも言われております。「旅行で人・物・お金が全国津々浦々まで移動する事は大きな経済効果を生み、この異常に沈んだ国の雰囲気を明るく元気にする」という声は真剣に取り上げてもらえず、「景気が良くなれば人は動く」という声、“余った予算は返納”という話をよく耳にします。
今、協会は政府、自民党、公明党に対し業界の苦悩を訴え陳情を展開していますが、特にGoToトラベルに関してこれを目的とすることではなく、手段とするよう申し入れを行っています。要旨はコロナ禍で剥落したインバウンド3,200万人が戻るまでは、その穴埋めのために日本人国内旅行者が0.5泊増加せしめるということで、その数字の達成あるいは外国人旅行客が戻るまで、GoToキャンペーンを続けるということです。自民党の観光立国推進協議会でも前向きに取り上げられ、さらに公明党も厳しい観光業界に対する新たな会議を立ち上げていただきました。
今後予想される国難に立ち向かう為に、我々が一番に望むことは来客の増加です。
金融対策や雇用の確保、あるいは施設の整備等に関する要求に充分なエネルギーを注力し乍らも正しい情報の中で安全安心な旅を増やすことこそが、現下の最重要課題であると信じています。
会員各位におかれましては、是非このことを共有され業界内外に強く訴え行動されることを願って止みません。
日本旅館協会あげての努力の結果が今年は報われ結実することを信じて年頭のご挨拶と致します。
日本旅館協会
会長 浜野 浩二