KNT-CTホールディングスは2024年5月14日、記者会見を開催し、2024~2026年度の新・中期経営計画の詳細を発表した。テーマは「信頼回復と持続的成長に向けたグループ一体運営の強化」。昨年発覚した近畿日本ツーリストのコロナ関連受注業務における過大請求に至ったコンプライアンス体制の再構築を急ぐとともに、事業戦略については成長領域である地域共創、訪日事業を強化し、地域への誘客に注力する。個人旅行事業はクラブツーリズムを主軸とし、近畿日本ツーリストとシステム面で統合する。
代表取締役社長の米田昭正氏は「3カ年にわたる新計画の着実な実行を通じ、KNT-CTグループが社会から必要とされる存在に生まれ変わり、持続的成長を実現するための土台づくりを進めていきたい」と表明した。
地域商社のような存在に
新中計では、「社会から認められる信頼づくり」として企業風土改革とサステナビリティ貢献、「成長を実現する領域づくり」に地域共創・訪日事業への注力、個人事業におけるクラブツーリズムを軸とした一体的事業運営、「インフラづくり」に人事制度のグループ共通化、システム統合などを掲げた。
特に事業ポートフォリオの再設計については、グループ一体化で地域共創、訪日事業を主軸事業に育てると強調。現在の売上高は国内旅行が主軸で海外旅行が続くが、国内旅行は人口減少に伴う縮小トレンド、海外旅行は円安などに伴う下ぶれへの懸念が大きいとして、2027年度以降の早期に売上高700億円、このうち現在8%程度のシェアである地域共創と訪日事業の合算で約20%程度に押し上げることを目指す。
6月14日付で新社長に就任する代表取締役専務の小山佳延氏は「これからの観光産業は出発地の視点から着地、すなわち地域視点で考えなければならない。こうした環境下で当社は川上のITを駆使するプラットフォーマーではなく、川下で地域の人たちと一緒になって課題を解決していく、汗をかきながら地域商社のような存在になっていきたい」と語り、そのために誘客型着地商品、地域共創モデルの全国展開を急ぐとした。
具体的には、年間約2万ツアーを販売するクラブツーリズムの地域との共創、アドベンチャートラベル、インフラツーリズムへの取り組みをさらに強化する。クラブツーリズムの販売サイトでも外国語受付を開始するなど、訪日需要の取り込みに力を入れる。
自己資本比率25%程度を維持へ
このほか、今後の事業の枠組みとして、BtoCの旅行ビジネスはクラブツーリズム、BtoB、ガバメント、PTAアウトソーシング業務などを開発した学校関連とスポーツなどは近畿日本ツーリストが担うことを明らかにした。
現在、顧客基盤としては近畿日本ツーリストが抱えるKNTメンバーズクラブがファミリー層を中心とした300万人、クラブツーリズム会員が60~70代の700万人の合計1000万人に上っており、これらのデータベースの統合、個人旅行の商品企画はクラブツーリズムに集約し、2社共用の展開に再構築する。3か年のシステム関連投資による支出は、個人旅行事業が190億円、団体旅行事業が20億円、その他90億円で300億を織り込んだ。
また、同グループの喫緊の課題となっているのが、人手不足の深刻化、事業運営の持続可能性に対する懸念である。人財戦略については、各事業会社の垣根を超えた共通化、とりわけ女性管理職の計画的育成と評価制度の見直しに取り組むとした。団体旅行はMICE、修学旅行が中心となっているが、訪日事業への展開を見すえ、グローバル人財の積極的な登用も視野に入れる。
コロナ禍での人員調整は苛烈で、2018年度には約7000人だった社員を2023年度には約4400人と大幅に減員。こうしたコスト構造改革により、販管費は2018年度の694億円を2022年度は431億円と、200億円程度圧縮した。
コロナ禍が明け旅行需要が回復したことにより、同社の営業利益は2018年度の25億円に対し、2023年度は72億円と好調だ。コロナ関連のBPO事業による特需はなくなったとはいえ、旅行需要の回復に伴い、2024年度に75億円、2026年度に85億円。将来的には120億円の収益を目指す。当期純利益は2018年度の12億円に対し、2026年度は80億円の目標。小山氏は「改善が堅調に進んでいる」との見方を示した。
資本政策の方向性については、「不測の天災や社会情勢の激変にも耐えうる資本の厚み、自己資本比率25%程度を維持しつつ、種類株式の償還を履行し、普通株式の早期復配を目指したい」(小山氏)とした。